不貞行為に関する違約金条項の意味や後になって争うことはできるのでしょうか?
違約金条項の意味とは?
不貞行為の場合だけには限りませんが,トラブルを解決する際の示談・和解に至る際に,違約金の定めを設けることもあります。契約書の中で禁止事項とともに定める場合もありますが,ここでは置いておきます。その場合に,どういった場合が違約となるのかははっきりしておかないと,何をもって違約といえる事項があったとなるかはわかりません。そのため,どういった場合に違約があったといえるかは明らかにしておく必要がありますし,合意をする前に,そうした違約条項を定めることで大丈夫なのか検討をしておくことが重要です。
違約金は合意に拘束力を求めるために,合意の違反に対する(債務不履行の損害賠償金)予定として定めるもので,法令上この金額を決めてしまうと,後で損害が少ないなどと争うことは基本的に無理となります。実際に違約といえる事項があったのかは,事実関係に争いがある場合には証拠があるかどうかが重要になります。そのため,条項だけで決まらない部分はあるものの,重要である点は間違いないでしょう。
不貞行為の解決に際しては,賠償額をその場面では一定程度譲歩する代わりに設けることがありえます。違約の元となる事情は,正当な理由のない接触を図ること・再度不貞行為に至ることもありえます。特に,前者の場合に一定の接触がありうる場合には,そうした取り決めをしてもいいのかどうかは,違約金額などの事情もよく考慮したうえで決める必要があるでしょう。
示談書や違約金条項が無効になる場合とは?
示談書での取り決めをする場合の重要性は上で触れましたが,いざ違約金の請求が問題となる場面で,その取り決めを争うことができるのでしょうか?結論から言えば,そのハードルはかなり大きなものと思われます。
ハードルが高いのは,一度合意をしておいたものが簡単に争えるのであれば,合意の意味がないためで,合意事項自体が公序良俗に反するといえるから無効・脅迫されたために取消等の場合のみです。このうち,前者については窮迫に付け込んだなどの事情も必要で,特にハードルは高いように思われます。ちなみに,違約金が違法行為の助長につながるような場合には無効になりますが,再度不貞行為をする場合などは当たりがたいことが多いように考えられます。
これに対して,後者の場合,脅迫をしたといえるだけの事情がある場合には取消が可能です。脅迫があったといえるかどうかは示談書を作成した経緯等が重要になっていきます。たとえば,数人で取り囲んで脅す行為が存在したケース・署名するまで帰ることができないようにしたという場合がありえます。不貞現場を探り当てた場合に数人で取り囲んで脅した場合には,後で強迫があったといえるかどうか問題になることもありえますが,例えば,弁護士を介して示談交渉をしたという場合には,なかなかそういえる場面は少なくなるでしょう。
ちなみに,思い違いがあったから契約を取り消す(法律上錯誤と呼ばれるもの)ことは,前提事項についての思い違いなどがないと難しいため,こちらもかなりハードルが大きいところです。いずれにしても,後になって争うのは事実関係がない等の場合(つまり,事実関係を認めるケース)ではハードルが高いので,合意をするならば,それで大丈夫なのかよく考えておきましょう。