暗号資産(仮想通貨」の売却した代金は婚姻費用や養育費で考慮されるのでしょうか?
算定の基礎とされる収入とは?
養育費や婚姻費用は生活や養育といった日常的な支出にかかるものであるため,基本は収入によって賄われるのが原則と考えられています。令和6年の法改正によって法制度化されることになりましたが,今現在を含めて家庭裁判所では標準再標識や算定表に基づいて基礎収入(収入額から税金や鋭匙などを引いたもの)を算出し,生活費指数で案分するという計算式や考え方がとられています。法律上は,資産や一切の事情などを考慮されると規定されていますが,収入がいくらかは大きな話となっていきます。
自営収入や給与収入は分かりやすいですが,資産の運用収入や売却収入は財産分与で考えるべきなのが原則と思われます。ただし,取り崩して生活費に充てている場合もありえます。この場合はこれらのお金も生活費の原資にあたるお金であるため,生活費の原資としての収入となるものと考えられています。実際に,そのように言えるかは生活状況やお金の動きなどから考えていくことになります。
裁判例の中にはどのようなものがあるのでしょうか?
最近は仮想通貨(現在法令上は「暗号資産」と呼ばれています)等を投資として購入し,売却をするという話があるようです。税務上は売却益が出れば課税を受ける(つまり,税務上の収入が出てくる)ので,売却があることを婚姻費用や養育費の計算における「収入」と同じく考えることができるのかは問題になります。ただ,婚姻費用井や養育費を考える上での左右乳は先ほど述べた話が当てはまるので,そこをどうとらえるのかという点も出てきます。
比較的最近の裁判例で,婚姻費用分担額の請求がなされたケースで,算定上の収入に別居前後の暗号資産の売却等により得たお金が含まれるかが問題になったものがあります(福岡高裁令和5年2月6日決定・判例タイムス1509号91頁)。このケースでは,暗号資産の売却等によって得たお金について,継続的に収益を得ていたわけではない⇒そこから継続的に収入を得ていた(取り崩しをしていた)とは言えないから,収入とは見ることができないという判断を出しています。
ここからは税務上の取り扱いはともかくとして,婚姻費用や養育費に算定基礎となる収入とは何かという点から考えるという話になります。また,資産売却や運用収入も当然にここでいう収入にならないのではなく,運用益で生活をしている場合や売買収入で生活をしている場合には,継続的な収益があり・取り崩しての生活費に充てているという話になります。そのため,生活の糧を得ている実態によっては「収入」に含まれることにもなりますし,給与などで足りない分を継続的にこれらの運用や売却によって得たお金で当てている場合には,婚姻費用や養育費を考える上での「収入」となる可能性があります。
あくまで裁判例での判断にすぎませんが,生活状況やお金の動きによって考える可能性を示しているように思われます。一律に考慮すべきではないと言い切れない可能性がある点には注意が必要でしょう。