令和6年民法改正によって,財産分与に関して何が変更になったのでしょうか?
離婚後に財産分与の請求をできる期間が延びます
現在,離婚の際に夫婦関係の財産を中心に財産分与を含めた話買いが行われることが多いように思いますが,特に離婚を急ぐ場合には先行して離婚だけ取り決める(子どもがいる場合には親権者の取り決めも必要)ことはありえます。負債の方が多い場合には特に材s何分与の話し合いをすることはありませんが,離婚後しばらくしてからの話し合いを行うことはありえます。
例えば,住宅ローンがかなり多額の場合(いわゆる負債超過の場合)であっても,マイナス部分を半分ずつ分けることも可能という話を財産分与に関してよくある質問であるように思います。もちろん,話し合いによって負担の割合を決めること自体は可能ですが,話し合いで決着がつかない場合に裁判官の判断へと至る,財産分与の手続きでは全体がプラスの場合でないと性質上使うことはできません。
そして,この手続きは離婚後は今の制度では2年以内に裁判所へ申し立てる(期間制限内であれば,話し合いで決着をつけようとすることも可能)必要があります。期間制限を超えてしまうと分与を申し立てることはできないのが基本になります。これは,夫婦の財産清算という意味以外の材s何分与であっても同様です。
期間が短いことの不合理への批判などもあり,令和6年の民法改正により,財産分与の請求期間が2年から5年に伸びました。改正法は令和6年時点でまだ試行されていませんので,令和6年現在での離婚についてはまだ2年の期間制限を念頭においておいた方が案です(改正の施行付則で経過規定が置かれる可能性はあります)。
考慮要素の明確化等・裁判手続きでの条項開示義務
財産分与を離婚後求めることができる期間が延びたこと以外の財産分与に関する主な改正点は
〇財産分与での考慮要素等が法律上明確化された部分がある
〇財産分与0に関する裁判所での手続きで,情報開示義務が設けられる
というものがあります。
現在の制度上でも,諸般の要素を考慮して裁判官が定める(裁判官が判断を行う場合)とされています。また,財産関係の資料を開示しない場合(特に合理的な理由がない場合)には,一定の財産が存在する等の推認を裁判官の判断で受ける可能性がある(それによって不利益な判断を受ける可能性がある)ことを示す裁判例があります。
考慮要素等について,改正後の内容では,公平の観点(これは現在も同じ)から,双方の寄与や年齢・収入や生活水水準・心身の状況・職業など一切の状況を考慮してと定められています。このうち,寄与については特に顕著な違いが示されない限りは等しいものと考える(現在の1/2ルールと呼ばれるものと同じもの)とされています。結婚による家督能力の喪失(一時仕事を辞める等の点)も補償などの要素に読み込むとする考えも示されており,ケースによっては影響が出てくる場合もあるかもしれません。
情報開示義務は,応じないことのデメリットが何かが一番の問題でしょう。現在応じない場合には,裁判所手続きでは調査嘱託等(裁判所を通じて照会をかける)の制度の活用での対応や先ほど触れた判断での不利益の可能性はあります。ここは今後も変わるところはないと思いますが,義務を果たさないことでの不利益(ペナルテイ)として,10万円の過料が裁判所の判断で課される場合もあります。また,先ほどの不利益な判断をされる可能性も,義務の不履行ということでこれまで以上に増える可能性もありえます。
令和6年時点では改正内容は施行されていませんが,今後施行予定となっています。