一度不貞行為を問い詰めたところ，相手が認めたという場合，当然そのことを前提に話を進めたいというお考えをお持ちになるのはありうるところです。ただし，後になってそうしたことは言っていない・脅されて言わされたなどの話が出てくることはありえます。

　証拠が口頭でのやり取りしかない場合には，言った言わないという話になる可能性があります。また，仮に認める部分だけ録音したとしても，無理やり言わされたという話を排斥できない場合も出てきます。例えば，数人で押しかけて認めるよう強く迫った場合などです。ケースごとの事情によってきますが，録音された際の状況はポイントの一つになりえます。特に，その場で一定金額のお金の支払いを合意させたという場合には，無理やり言わされたと主張される可能性が高くなるケースも出て来かねません。

　そのため，口頭しかないケースや認めるところの録音で後に争ってきたケースでは，少なくとも，不貞行為の根拠となるような証拠があった方が後で言い逃れをされる可能性を減らすことはできます。いわゆるラブホテルなどに出入りしたことがわかる写真その他の使用もありえますし，やり取り（不正アクセス行為などにならないようにする必要性があります）というのもありえます。
　少なくとも，一回認める行為があったから大丈夫・録音があるから必ず大丈夫とは限らないことは頭に入れておいた方がいいように思われます。

　不貞行為があったと認める言動は，それが後で翻されて争ってきた場合でも，争えるように証拠があれば，大きな意味があります。何もなくて自分に不利になりかねない（慰謝料や離婚の根拠となりうるもの）わけですから，簡単に認めるわけがありません。仮に民事裁判の場面（慰謝料請求のケース）でも，事実関係を争わない場合には，慰謝料金額はともかくとして，慰謝料の支払いを命じられる可能性が極めて高くなります（こちらは民事訴訟法という法律の決まり上そうなる話です）。

　とはいえ，先ほど触れたように，後で否定したうえで相応の理由を述べた場合には，そもそも裏付けが必要になる・作成の経緯から強要行為があったかが大きく問題になることもあります。認めるからにはそれなりの根拠や証拠があることもあるので，尾行などで見つけたという場合でも，認めたという発言以外に不貞の証拠自体あった方がいいと思います。もちろん，請求や認めてもらう経緯の中で強く迫る行為がある場合には，恐喝行為などになってしまうこともあるので（正当な請求のできる権利があっても，請求の仕方などによっては恐喝罪に問われる可能性があります），そうならないように注意は必須です。穏やかな口調で言えば，当然に問題ないとも限らない（前後のやり取りなどの事情も考慮されるため）点も同様です。

　くどいようですが，重要ではあるものの，これだけで決まると限らないこともあるという話になります。