よくある相談

婚姻費用の支払いを拒否することでのリスクとは?

差押え等のリスク

 婚姻費用の支払い義務は,基本は別居後離婚するまでは追っている義務です。支払いを求めてこないから支払いをしなかったとしても,当然に離婚の場面での財産分与ですべて考慮されるわけではありませんが,請求があり金額が決まった場合には,差押えのリスクが出てきます。他のコラムでも触れていますが,差押えをされると,給与についてはその後も離婚まで差押えが続く可能性があります。財産調査や財産開示の請求を受けることがあり,後者についてはペナルテイを受ける可能性もあります。

 近年何度か法改正がされていますが,調査などをしやすくなるような改正であり,支払い能力がない場合はともかく,意図的に支払いをしない場合のリスクはあります。

離婚請求が認められないリスク

 生活費(婚姻費用)の支払いもなく,別居が続く場合には,婚姻関係が修復できないだろうということで離婚裁判の場合の離婚理由にあたる可能性は出てきます。生活費を支払わない側に対しての離婚請求の場合には,離婚判決が出される可能性が高くなっていきます。

 これに対して,婚姻費用(生活費)を支払わない側からの離婚請求が認められるのかという問題があります。裁判所の判断の枠組みでは,婚姻関係が破綻しているという評価の中にこうした事情を考量するかどうかという話もありえますが,仮に破綻していると評価されたとしても,離婚請求が棄却される場合もありえます。それは,主に不貞行為をした側から離婚請求において問題となる「有責配偶者」からの離婚請求が信義に反するから否定されるという話です。ここでいう「有責配偶者」に婚姻費用の支払いをしない場合が含まれるのかという話です。

 別居などで夫婦関係の修復が難しい場合には離婚請求が認められるべきところ否定されるとなると例外的なケースになるはずなので,そうは広く少しでも生活費の支払いをしないケースが当てはまらないで乃はないかと思いますが,実際に該当を認めたケースもあります。比較的最近の裁判例では,東京家裁令和4年4月28日判決(家庭の法と裁判56号57頁)があります。2審でも判断が維持されたようですので,生活費の支払いを長くしないことが特に婚姻費用の調停や審判で決まった場合には「有責配偶者」に該当する可能性も出てきます。

 このケースの事実関係の概略の一部によりますと(判決文の認定事実をベースとしたもの),離婚調停で話がつかなかってから生活費の支払いをしないままでいたところ,婚姻費用分担調停・審判で婚姻費用の支払いを命じられていたという事情があるようです。支払いをしない側から離婚請求を行ったものです。

 
 判決によると,こうした事実関係(離婚調停が不成立になるまでは生活費を支払っていたことも踏まえて)に基づき,別居期間などから夫婦関係の修復は難しいものと判断しています。そのうえで,離婚の実現を目指して生活費の支払いを長く拒むなどの事情から,兵糧攻めにしたことによってもたらされたとして「有責配偶者」からの請求であるとして,離婚請求を退けています。

 このケースでは,離婚を求める側が,離婚請求受けている側に家賃請求の裁判を行うなどしていた事情も踏まえてのhだ判断でもあり,露骨に兵糧攻めといえるだけの事情があったための判断からかもしれません。事実経過や生活費の支払いを命じられているにもかかわらずあえて支払わないその他の事情によっては,こうした判断になるリスクは出てきます。

 仮に婚姻費用の支払いをしない場合には,事情によってはこうした判断につながる可能性もあることは頭に入れておいた方がいいでしょう。

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