令和8年4月からの養育費等の回収手段の強化とは?
その概要は?
令和8年4月から,養育費の回収をしやすくするという法改正が行われます。他のコラムでも触れています,協議がつくまでの「法定養育費」や公正証書がなくても差押え可能な部分が出てくる等の改正があります。このほかにも,養育費の請求を受ける相手方の差押対象の情報を得やすくする改正が施行されます。ここでは,その概要を軽く触れていきます。
概要は,財産内容の開示申立て・金融機関や行政などの第三者からの財産情報の取得申立て・差押えの申立ての原則ワンストップ化になります。差押えをするには,何を差し押さえるのかという情報が必須になります。そうでないと,差押えをして処分ができないようにし,後で回収をする対象が分からないためです。財産開示は,支払いを求められている方の財産内容を回答拒否や虚偽回答等についてペナルティを設けつつ,回答を求めるという制度です。情報取得は,財産の内容について把握している方からの,支払いを求めている方の財産にかかわる情報の取得を求める手続きになります。
ただし,ワンストップ化した手続き(養育費等の回収の場面に限られ,一般的な貸金その他の回収では設けられていません)の対象となる,第三者から情報を取得する対象となるのは,給料のみとなります。預金あるいは不動産など他の財産にかかわる情報は含まれません。
本来差押命令の申立て・財産開示の申立て・情報取得の申立ては別個の手続きですから,一つ申し立てたからといって他の申立てをしたことにならないのが原則です。改正によって,財産開示や情報取得という,差押えの前提となる申立てをした場合に,原則として差押えの申立てもしたものとして扱われることになります。申立の手間を減らすという意味合いがあります。ここでの養育費とは,これまでの公正証書や調停などで取り決めた場合のほかに,担保権を与えられる範囲の支払合意のある養育費や法定養育費も対象となります。
また,財産開示の申立てなどは,貸金その他を返さない場合にも使うことができますが,法律で定められた要件を満たす必要があります。養育費等のような特例は設けられておらず,そう簡単に使うことはできない面もあります。
どういった流れで進み,対応の注意点はあるのでしょうか?
先ほど挙げた手続きのうちうち,財産開示の申立てをするか・第三者からの情報取得の申立てをするかは,請求する側が選ぶことになります。財産開示を選択された場合には,財産目録に該当するものを記載して提出すること・指定された日にちに裁判所に出頭し,財産内容に関し質問などに対応することを求められます。これに対して拒否や嘘の回答をすることにはペナルティを受ける可能性があります。情報取得を選択された場合には,例えば,毎年1月末までに提出されることとなっている給与に関する情報(税金関係)などを基に,給与に関する情報が提供される可能性があります。いずれにしても,差押えの対象となる情報が提供される可能性があります。
そして,給与については,一度差押命令の申立てがなされると,不払分を支払っても,差押えの効力は原則として続くという点にも注意が必要です。相手と話し合いをして,取下げに応じてもらう必要があります。ただ,通常,支払いの高い見込みがないと応じて来ない可能性が高いと思いますので,この点の手当は必要になるでしょう。
申立が容易になるように,裁判所サイドでも書式を準備する見通しとのことであるので,法定養育費など突然に差押えやそのための情報取得のための手続きが取られることがあります。対応しないことのリスクもありますので,無視はできないところです。もちろん,財産自体もなく支払うだけの給与もない場合には,そのことを伝えるとともに,その原因が負債であれば債務整理やその他相手と協議をしておくことも必要となってくるでしょう。
勤務先もわからないというのは特に離婚してすぐの時期はそこまでないかもしれませんが,預金などが分からないということはありえます。離婚の際に厳密に財産分与の話し合いをしていた場合には,相互に財産内容を開示している形になるのであまりないような気がします。ただ,そこまでしていない場合には,預金などがあるだろうということで,こうした調査を受ける可能性もあります。
面会交流(親子交流)など離婚後も子どもとの関係をうまく構築できている場合には,こうしたことが問題になることはそこまでないかもしれません。ただ,交流がうまくいかない場合にこそ,突然の差押えや情報を取得されるなどの点がリスク要因になることは頭に入れておく必要があります。

