お互いに決めたはずの婚姻費用の効力が否定されることはあるのでしょうか?
否定されることはありえます
離婚する際のとりあえずの高騰のやり取りで養育費を何となく決めたケース以外に,別居の際に当面いくら渡すということでやり取りがされることはあります。別居により思わぬ費用がかかる・当初想定していたよりもお金がかかるため支出を減らしたいという場合に,対立が起きると面倒である一方,柔軟な調整の余地を残す意味ではメリットがあるかもしれません。
対立が起きると面倒というのは,実際にこのやり取りで婚姻費用の金額面を含めてきちんと合意をしたと評価できるのか(言い換えると,そうではないとして家庭裁判所に調停等の申立てをして別途の支払いの判断へと至るのか)という問題が出てくるためです。
簡単なやり取りとはいっても,提案と承諾ということがあれば一応合意ができたということはできます。だから,合意で決まっているものを決まっていないというのはおかしいではないかという点が問題の一つの原因と思われます。家庭裁判所への調停等の申立てがある場合に,当初取り決めたはずの金額と異なる場合,支払う側にとっては金額が結構増えている場合には反論をしたくなるところです。
合意がきちんと成立していると評価できれば,再度決めなおすということがない限りは何も取り決めがないから新たに決める・判断するというところはないように思います。
調停の場で話し合いが難航すれば,審判で合意が成立したと評価できるか・そうでない場合には金額をどうするかが等問題になりえます。前者については結局はやり取りの内容やその前提としていた事項等の事実関係を見て,あくまでも事後的に裁判官の目から見て,確定的な合意が成立していたと評価できるかという話になります。約束したはずだからということとは視点が異なる部分があるという点に注意が必要となっていきます。確定的な合意ではないとはどういうことかといえば,きちんと取り決めるまでの暫定的な金額という意味合いです。もちろん,その金額を支払っていれば,その部分は支払い済みという扱いになるのが普通です。
比較定期最近の裁判例(東京高裁令和5年6月21日決定・家庭の法と裁判50号53頁以下)で,確定的な合意があったといえるのかどうか等が争点となったケースが存在します。ここでは合意の場面のやり取りだけでなくそれ以前のやり取り(具体的な婚姻費用の話がさていたかどうか・最低限の生活費をとりあえずgほしいという話だったのか・専門家でない方のやり取りの中で離婚後の養育費と離婚前の婚姻費用の区別をしていた話であったのか等)を踏まえて判断をしています。その意味で,事実経過とそこに対する評価が問題となっていきます。このケースでは1審で確定的な合意を認めたものを2審で覆しています。他の裁判例でも確定的な合意を認めたものと認めていないもの(前記の掲載誌の解説部分でいくつか言及されています)があります。
注意となるべき点は,地王のやり取りがされているからといって当然に後で争えないということと,覆されるリスクを考えて,どこで折り合いをつけていくのがメリットがあるのかというところです。
別途t取り決める場合とは?
上で述べた点を踏まえると,ケース(特にいわゆる算定表から見て金額がかなり少ないケース・やり取りが曖昧か,一方的に告げるに近いケースなど)によっては,確定的な合意とは言いにくいと判断される可能性を考慮する必要が出てきます。
確定的な合意をしている場合であっても,仮想ではなく暫定的な合意扱いになる可能性がある場合でも,別途とりきんうぇおすることは可能です。その際にはリスクの考慮やリスクが現実化した場合にどこまでの金額になる可能性があるのか・相手とのやり取りでの感触なども踏まえて,別途取り決めをするということも十分にありえます。
いずれにしても,確定的な取り決めとなると,原則はその金額は必ず支払う義務が出てくる(支払わない場合には給与などの差押えのリスクが出てくる)点を意識しておくことは重要となってくるでしょう。