協議離婚をした後に,親権者の指定の有効性が争われる場合とは?
協議離婚での親権者の指定の有効性が争われる場合とは?
離婚をする際は,親権者の指定が必要であり,令和8年に改正法の施行が予定されていますが,この原則は変わりません(例外となるケースが設けられる予定です)。協議離婚の場合,離婚届は役所に出すことになり,そこには未成年の子どもの親権者を定める必要があります。離婚をした後に,離婚自体が無効であったということが問題になることもありえますが,離婚自体には争いがないものの,親権者の指定の記載の有効性のみが争われることもありえます。
実際にこうした争い方もありうるところであり,事後で話がつかなければ,家庭裁判所での調停などで解決を図ることになります。令和6年の民法改正により,親権者変更の場面でも協議離婚の際の状況(一方的に親権者の指定を押し付けられるなどの事情があったのかどうかなど)も考慮要素として挙げられていますが,親権者の変更という形も今後はありうるところと思います。ただ,そもそも親権者指定が無効となると,定め直しが必要になります。
比較的最近の裁判所の判断として,東京家裁令和4年10月20日判決(家庭の法と裁判56号49頁以下)があります。このケースでは,1審の判断が2審でも維持されています。争点は複数ありますが,他に親権者指定の協議がされたのか否か(親権者指定の部分の有効性)が大きな争点です。結論から言えば,親権者指定が無効であることを認めています。
離婚届に,子どもの親権者をどちらにするかの記載があるとともに,双方の署名と押印があるからこそ事後にその有効性が争われるものと思われます。そのため,署名や押印をした経緯,その前になされているはずの協議がきちんとされたのかどうか,その経緯がどうであったのか等の事実関係が大きく問題になるでしょう。先ほどの裁判例のケースでも,こうした事実関係から見て親権者の指定をするための協議がなされたのかどうかが問題となっています。
争いが出てくる場面では,言い分や裁判になった場面では双方の供述が大きく食い違っていることが多いと思われます。結局はその信用性がどう評価されるのか・事実経緯で争いがない部分や他の証拠から見てどう評価されるかが問題となってくるでしょう。先ほどのケースでも詳細は触れませんが,他の証拠との整合性やその関係その他から不自然なものといえるのかどうかなど信用性の評価などがなされています。そうしたところから判断を示しています。
そのため,協議を進める際にはきちんと親権者指定の話をしていたことの証拠が重要になりますし,既に親権者の部分も記載したものに署名と押印をするだけということでは他の経緯などから見て後でトラブルになる可能性もあります。
争われる場合の手段とは?
先ほどの裁判例では,最終的に家庭裁判所での裁判で決着がついていました。方法としては,事後にお互いで話し合いをすることもありえますが,なかなか難しいことも多いと思われます。その場合には家庭裁判所での手続きを利用することになります。まずは調停手続きを利用することになるでしょうが決着がつかない場合には最終的に裁判での解決を図ることになるでしょう。
以前は,こうした場合に裁判で争うことができるのかが問題になっていたようですが,先ほどの裁判例の掲載雑誌に詳しく説明がありますが,近時は最終的に裁判での解決の方向性が定着しているようです。先ほどの裁判例でも,裁判所での手続きでの解決を図ることができる点を前提に判断をしています(裁判での解決ができるのかどうか自体は判決文からは大きな争点にはなっていないようです)。
最終的には裁判所の解決に至るでしょうが,証拠などから見ての可能性等を事前に専門家とも協議しながら見極めておくことが重要なように思います。