相手方が自分の財産を見せないときにどのようにすれば良いでしょうか
調査嘱託という方法を用いる場合の注意点
家計を結婚後もっぱら妻に管理を任せていて、通帳を含めて渡していたので、いざ離婚の話になったときにどのように給料が管理されていたかよくわからないという場合があります。また最近では夫婦共働きで、住宅ローンや公共料金、日常必要な支払いはもっぱら夫がしており、妻の収入はどうなっているか、いくらあるかも分からないということもあります。
このような場合、結婚後夫婦で築き上げた財産の清算をするときに、何があるのかというところから調査しないといけない、という場合が少なくありません。こういった場合、離婚に備えて別居前から相手の資産状況を調べていれば比較的調査の負担が少ないですが、逆の場合、つまり全く離婚について考えてもおらず、いきなり離婚を突き付けられたときは、相手方の財産に関する情報を全く把握できていないということがあります。
こういった場合に利用できるのが、調査嘱託の申立てというものです。金融機関については、ある程度あたりがつくところに弁護士会を通じて照会することはできますが、夫婦であっても個人情報であることを理由に開示を拒まれるケースが多いため、調停や裁判の手続きの中で家庭裁判所から照会してもらう、というものになります。離婚を前提とする場合には、財産分与も問題になりますので、お互い保有する財産について任意で開示をすることも多いですが、必ずしも全部開示されているか分からないため、こういった手続きを利用することになります。
もっとも、調査嘱託の申立ては最終的に裁判所に採用されないと照会までこぎつけません。特にここにありそう、という理由で網羅的に開示を求めても、相手方からは異議が出る可能性が高く、実際にその金融機関(ないし支店)に口座があるという裏付けが必要なことが多く、ここでも相手方の財産に関する資料が手持ちでないと認められにくいというハードルがあります。
そのため、金融機関の所在が全く分からないときは給料の口座からたどる、確実にありそうな口座の履歴を一定期間開示を求め、そこから保険の支払などを見つけてたどる、といった地道な作業が必要になることもあります。
民法改正における情報開示命令制度とは
それでは、どこに相手方の財産があるかもわからない、また相手方も開示をしようとしない場合には、どうすれば良いのでしょうか。
こういったときに利用できるものとして、令和8年4月から施行されている改正民法では、新たに「情報開示命令の制度」が設けられました。これは、財産分与に限らず、婚姻費用(生活費)や養育費の計算をするのに必要な収入に関する情報を開示しない場合を含めて、開示を求めることができる(あるいは裁判官から開示を求める)というものです。
仮に開示を求められているにも拘わらず特段理由なく開示をしない、あるいは嘘の内容の報告をしたときは10万円以下の過料(行政上の処分)を支払わなければならなくなるという仕組みも設けられています(もっとも10万円を超えて資産をもっているときはそれでも隠すということも考えられますので、制裁の限度はあります)。
また、この制度の場合は先の調査嘱託と異なり、当たりがなくても広く開示を求められるのを前提にしているように思えますが、実際にどこまで認められるのか(全く開示をしていない場合はともかく、ある程度開示をされている場合、これ以外にも隠しているというだけで認めてもらえるのか、など)は今後の裁判所の運用を見てからになるでしょう。

