よくある相談

離婚時に,養育費を請求しないという約束をしても,その後に請求を行うことは可能なのでしょうか?

親夫婦の合意だけでこうした取り決めは可能?

  例えば,一度口頭で養育費はいらないと妻側が離婚時に言っていたけれども,後で請求をしてきたという場合があるとします。この場合に養育費を支払う義務があるのかは気になるところです。養育費の取り決め自体は親がするものですが,あくまでも子供のためのお金であるので,ゼロという合意がありうるのかはまず大きな問題となります。

 そもそも,先ほど挙げたような話であれば,ケースごとの事情による側面もありますけれども,合意がなされたのかどうか(言った言わないの話や合意までは至っていない等)という点でも問題になります。証拠がない場合には,争いが生じている点でそんな約束はないという話になることもありえます。また,子供の扶養義務を果たさないという合意が有効なのかという問題(無効になる可能性も十分ありえます)も十分に出てくる話です。

可能だとしても,後に事情変更を理由とした養育費に関する取り決めの変更を求められるのでしょうか?

 結論から言うと,求めることは可能です。言い換えると,先ほどのような話では後で養育費の調停その他を求められる可能性があるという話です。離婚の際に,養育費を請求しないという取り決めをした場合には事後の事情変更に基づく養育費の増額請求という話になりますが,こちらを認めた裁判例もあります。

 

 先ほど触れた養育費の支払いをしないという合意の存在や有効性の問題もありますが,養育費の増額請求における事情変更の存在という点も問題になります。子供は成長していくものですから,成長・進学に伴う費用の発生や収入や資力面での変更という可能性もあります。もちろん,事情変更は合意時点で想定されたものや小規模なものは変更が相当なのかという問題もありますので,当然に認められるわけではありません。

 

 裁判例の中(大阪高裁決定昭和56年2月16日)のケースでは,まさしく一度裁判所での離婚での手続きの中で,養育費の支払いをしないという合意がされた後で事情変更に基づく養育費の増額が認められたケースになります。このケースでは,成長や進学に伴うお金が取り決め時よりも多く必要になったこと・元妻側が家族を含めた収入の減少やあてにしていた財産の減少などの事情が発生したことを理由に事情変更を認めています。このケースにおいて,父親側は一度請求しないと決めたのに請求するのは信義に反するなどの主張をしていた模様ですが,裁判所の判断では離婚成立時の合意は有効であることをおそらく前提として,事情変更の有無を判断しています。

 仮に一度取り決めをしていても事情変更があれば養育費の変更を求めること自体は問題ありませんので,どこまでの事情変更があれば該当するのかという問題になってくる面はあります。このケースにいうような進学などに伴う費用の増加(特に大きなもの)や収入などの変更は該当するかの末井が高いという点があります。そのため,一度取り決めがあったからその後絶対に変更がないというわけでもないという点には注意が必要でしょう。

 

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