よくある相談

別居時の生活費(婚姻費用)の請求を受けた場合に,転居費用を加算されることはあるのでしょうか?

原則は加算されません

 いわゆる標準算定方式と呼ばれるインターネット上でも見かける算定表のもととなった考え方では,様々な要素を考慮に入れたうえで,標準となる収入に応じた婚姻費用や養育費の負担に関する指標を示しています。ここですべての要素を考慮しきれているわけではありませんが,一般的なケースで当てはまる事項・考慮されている事項を別に考えることなく,ここで示された数字を基礎に金額を考えていくのが家庭裁判所での判断等の場面では多いように思われます。

 したがって,私立中高に通っている・失業給付等考慮されている経費が掛からない場合などの場合はともかく,それ以外に加算や減産をされるケースは限られています。その意味で,原則加算をされることはありません。

加算されたケース(裁判例)

 審判例によっては,算定表(標準算定方式)で考慮されていない事項を考慮する場合も公平の観点からありうることを示唆したものがあります。また,見解の中には例えば,請求を受けている側が別居等にもっぱら責任がある場合には金額が加重されることを説く見解も存在します。審判例(東京家裁平成31年1月11日審判・家庭の法と裁判30号99頁)では,不貞行為を行った夫側が妻らが居住している住宅は夫の経営する会社の社宅であること等を理由に退去を求め,退去し新たに賃貸住宅を借りた妻側から婚姻費用の分担請求がされたケースです。

 

 このケースでは,住宅の借主である会社自体が賃貸借契約の解約を近日中にすることなどが理由とされたという経緯もあります。新たに借りた家の賃料(妻側が借りたもの)や子供の習い事の費用を算定表の金額に上乗せすることができるかが大きな争点となったものです。具体的には夫婦双方の収入に応じて案分するというものです。

 いわゆる家の家賃は住居費という項目で算定表(標準算定方式)で考慮されているものではありますが,そじょで考慮しきれていないものの分担を求めることができるのかが問題になったものです。結論から言えば,裁判所の判断では,経緯から見てやむを得ない転居であること・子どものためも踏まえて生活環境をできるだけ近いものにすること(近隣への転居)・不相当に高い負担ではないことを踏まえて,収入案分で考慮されていない部分の家賃を上乗せすることを認めています。

 あくまでも,このケースでの事情(やむなく転居をせざるを得なくなったこととその経緯やりとり・近くでの転居が必要になったこと等)を踏まえた判断なので,妻側が家を出て行った・ケース一般や夫側に不貞行為があったケース一般に当てはまるわけではありません(このことはこの裁判例が紹介されている文献でも言及されています)。とはいえ,加重される可能性もありうることは注意が必要です。

 

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