令和6年における民法改正で離婚時の親権はどうなるのでしょうか?
現在の規定内容からの変更点とは?
改正内容は別のコラムで簡単にまとめていますが,親権については協議離婚の場合,単独親権(現在と同じ)か共同親権(離婚後も父母ともに親権者)かを選べるようになりました。対立が大きな場合には家庭裁判所での手続で解決をしていくことになりますが,今の制度と異なり,家庭裁判所で親権者の指定などの申立てが別途されていれば,離婚を先行する場合も定められました(現在は親権者の問題が解決して初めて離婚となります)。
また,共同親権となった場合(離婚時だけでなく,婚姻期間中も)に,単独で親権を行使できる場合(つまり,相手の同意は不要な場合)が定められました。子どもの不利益を避けるため緊急の必要がある場合・家庭裁判所が定めた事項がある場合,等で単独行使をできる場合が法律で定められるよう改正されています。
親権者の指定(離婚時)や離婚後の親権者変更の際は,法令上かなり概括的ですが家庭裁判所での判断の際の考慮事項が規定されています。これまでの父母と子どもの関係等の諸事情が考慮されると規定されていますが,諸事情の中には子ども自身の意思なども含まれるでしょう(ただし,子どもの年齢も考慮要素になるでしょう)。
離婚時に家庭裁判所での手続で単独親権が定められる場合の考慮要素として,子どもの心身への害悪が生じるおそれがある場合・父母の間のDVや話し合いがつかなかったこれまでの経緯その他の事情を考慮して,共同親権の行使が困難と裁判所が認める場合が挙げられています。具体的にどの場合を指すのかという問題は出てきますが,ここを広くとれば単独親権となる場合は多くなりえます。
共同親権となった場合でも,別に監護者(実際に子どもを養育監護する方を定める)を定めることもできます。定めた場合には,同じ親権を持っているといっても,監護者の監護を邪魔してはいけないとされ,優劣がつけられます。そのため,共同親権で合意をする場合こそが監護者が誰かという話が重要になってくるものと思われます。
親権者変更には,現在事情変更があって子どもにとってどちらの親の養育監護が望ましいかが,争いがあるケースで重要なところですし,家庭裁判所での手続が必要になります。改正により,離婚時における合意の背景事情が裁判所で考慮されることとなりました。例えば,家庭裁判所の手続きを利用しているかどうか・公正証書の作成によって専門家などの関与があったのかどうか・暴力その他で一方的な意思の押し付けに近い形で離婚時に合意をしたのかどうかなどというものです。その他,現在は申立てができない子ども自身も家庭裁判所に親権者の変更を申し立てることができるようになります。
離婚時に共同親権が原則というわけでもありません
離婚時に子供に対して共同親権で合意をした場合には,当然に共同親権に離婚後もなります。ただ,共同親権に反対をしている場合には,事情によっては離婚後に親権者の指定がなされる場合が出てくるようになりました(改正前,令和6年時点では必ず親権者指定がないと離婚ができません)。
対立が大きい場合は,現在の制度がそうであるように家庭裁判所での調停や裁判手続きの中で,解決を図ることになります。裁判段階まで行った場合には,裁判所が判断をする形になります。先ほど触れましたやや概括的ですが,子どもと父母の関係や父母の関係その他一切の事情を考慮して,子どもの利益の観点から定めるとされています。単独親権となる場合の考慮要素で子どもに対する心身での害悪などが挙げられていますが,事実関係がどうなのかといった点とともに評価をどうするかが問題となってくるケースはありえます。
少なくとも親権者を誰にするのか(単独親権になるのかどうかを含めて)対立が大きいケースでは,当然に共同親権になるわけではないことには注意が必要でしょう。