離婚後に,離婚前の配偶者の不貞が判明した場合に,慰謝料請求は可能でしょうか?
証拠や時効の問題があります
離婚後しばらくしてから,実は離婚前に配偶者が不倫をしていて,そのことが離婚の話に影響したことが分かったという場合に,慰謝料請求を元配偶者に対してできるのでしょうか?
結論から言えば,かくたる事実関係や証拠が存在していれば,時効にかからない限りは慰謝料請求をできる可能性はあります。ただ,後で触れる離婚協議書を慰謝料などの可能性も踏まえて内容を調整をしていた場合には,請求をすることに関してデメリットが生じる可能性もありえます。
まず,一番問題になるのは,実際に不貞行為(不倫)があったといえるだけの事情・証拠があるのかという話です。たとえば,離婚後数年してから当時の共通の知人から何となく話を聞いた場合には,事実として曖昧な話ですし,証拠も少なくとも客観的なものはありません。元配偶者が事実関係を認めるならばともかく,そもそも連絡が取りにくいなどの話であれば,認めるということはそうは考えにくいようには思われます。この場合,はっきりした事実(いつごろ・何を・どこでしていたのか等)やその裏付けがないと,元配偶者が否定した場合に,それ以上は何もできない可能性があります。
また,仮に証拠があったとしても,何となく不倫があるだろうなといえるだけの事実関係をそもそも知っていた場合には,時効に必要な期間が経過してしまうこともありえます。時間が経過するほど,証拠をそろえる難易度は上がります。現時点での元配偶者の交際関係を把握しても,離婚んから時間を経過していれば,離婚前の不倫があった事を示すことには繋がらないので(離婚後から交際を始めたという可能性が高くなっていきます),特に証拠面のハードルがかなり大きなものになっていくように思います。
追求できるだけの根拠が弱い場合には,相手の反撃を招きかねない場合もありえます。
離婚協議書を交わしている場合には?
離婚協議書を作成している場合には,協議書によっては清算条項といって,今後何も請求をしあわないという項目が存在することもあります。専門家が関与していれば存在していることが通常ですが,後での慰謝料請求を言うことになると,ここに引っ掛かるかも問題となります。
結論から言えば,合意の当時に想定できた事情に不倫が含まれるならば,後で請求はできません。これでは項目を設けた意味がなくなるためです。専門家が離婚時に関与していた場合には,ある程度の事情を精査した可能性があるのが一般的な話であろうかと存じます。ただ,離婚した点では不貞行為や不倫がわかりえなかった場合には,離婚協議書作成の段階での前提事情で思い違いが存在したということになります。
この場合に,離婚協議書記載の条項を取り消すことができる場合もありますが,その場合には離婚協議協議書で取り決めたお金の話も全体としてやり直しになるのが一般になっていきます。ここへの制約(関係ない方への影響)は法律で別途定められていますが,やり直しをする場合に,前回取り決め時にかなりの程度相手に譲歩してもらっていた場合には,全体から見て前よりも条件面が悪くなる場合もありえます。
何よりも,先ほど触れました証拠などのハードルが存在し,そもそも取り消しができる場合なのかどうかという点でのハードルが最大のように思われます。
やり直しがそもそもできるのかどうか・やり直しをした場合の影響面双方を考えて,どうするのがいいか決めていく必要があります。