裁判のIT化は離婚手続ではどのように進んでいるのでしょうか。
今現時点でIT化されているものは?
「裁判のIT化」という言葉を聞かれたことがあるでしょうか?最終的には申立てから判決まですべてオンラインで完結するという手続きを目指すもので、民事訴訟については令和8年5月までに施行されることになっています。
民事裁判のデジタル化は令和4年5月に成立した民事訴訟法等の一部を改正する法律と、令和5年6月に成立しました民事関係の手続についての情報通信技術の活用などを推進する関係法律の整備に関する法律により、進められています。
令和7年9月時点では以下のような活用がされています。
➀ WEB会議の活用
特に家事調停では、申立は相手方の住所地を管轄する家庭裁判所か、話し合いで決めた家庭裁判所に申し立てるに行うこととされています。そのため、特に別居して遠方に居住している方から調停を申立てる場合、調停のたびに遠方の裁判所に行かなければならないという負担がありました。その後、家事事件手続法で遠隔地の裁判所で裁判を行う場合、電話やテレビ電話で調停手続を行うことができるようになりました。
令和3年12月以降は順次Web会議が調停の場面でも試行されるようになりました。家事調停ではWebexのシステムが利用されており、Webで調停を行うことを希望し、裁判所が相手方の意見も聴いた上で相当と認めた場合には、裁判所にメールアドレスを登録し、調停当日用の招待が送られてくるという仕組みになっています。これは御本人に代理人弁護士がついていない場合でも、パソコンを使用できる環境にあれば利用できるようになっています。
Web会議の利用により、現在では遠方の裁判所に出向いたり、DV案件のように裁判所に出向く場合はリスクがありうるケースでも安心して調停に参加できるようになっています。
また、人事訴訟(離婚裁判など)のように調停が不成立になり、裁判になった場合でも弁護士が代理人で就いている場合は第1回期日からWeb会議により行われるようになっています。人事訴訟の場合は民事訴訟と同様、MicrosoftのTeamsというシステムを利用して行われています。書類提出については将来的にはすべてオンラインでの提出に統一される見通しですが、現状は事件によって従来どおり紙ベースでの提出であったり、裁判所独自のシステムでの利用がされたりと混在しています。
調停の場合のWeb利用は主に申立裁判所が遠方の場合を想定しており、最寄りの裁判所での申立は現状通り出廷が前提となっています。他方で人事訴訟の場合は裁判所が遠方でない場合でもWeb会議で行うことが原則になっていますので、当事者の方が参加を希望される場合は、事務所に出向いていただき、パソコン越しよりWeb裁判にご参加いただくことになります。
➁ Web会議による離婚等の和解・調停成立が可能に
もっとも、電話ないしWebでの調停手続・裁判手続き参加は認められても、最終的に和解ないし、調停成立による離婚となると、当事者の方に必ずご出廷いただき、意思確認を行う必要があるとされていました。そのため、仕事で平日に出向くことは困難な方、ないし遠方の方でも1度は裁判所にお越しいただかないといけない点がネックとなっていました。
これについても令和7年3月より、離婚訴訟や離婚調停手続であってもWeb会議を利用して和解ないし調停離婚の成立ができるようになり、調停については裁判所にお越しいただかなくても手続が完結できるようになりました(ただし、Webの場合のみ、電話でしか参加できない場合は出廷が必要になります)。
他方で離婚裁判の場合,尋問手続についてもWeb会議で可能となりましたが、実際のところ当事者の方にお話しをしていただく場合は、裁判所にご出廷いただくのがまだ一般的のようです。
今後IT化の手続はどのように進むでしょうか?
民事裁判については、オンライン化について、
・「e提出」(主張・証拠の提出をオンラインでの提出に1本化したり、訴訟記録を電子記録に1本化する)
・「e事件管理」(主張、証拠への随時のオンラインアクセスや、期日の進捗等をオンラインで確認することを可能にする)
・「e法廷」(Web会議やテレビ会議を導入、拡大し・争点を整理する手続でデジタルツールを活用する)の「3つのe」を実現することを目指して、段階にわけて進められてきました。
今後令和8年5月までにインターネットを利用して訴えの提起や各種申立書などを提出したり、裁判所からの書類送付の受取がオンラインでできるようになります。
また、裁判所に提出された申立書などは、原則電子データで保管され、判決などの裁判所や家庭裁判所調査官の調査報告書も電子データで作成・保存されるようになります。
必要な資料についてはオンラインで事件記録にアクセスして閲覧したりダウンロードできるようになります。
代理人弁護士については、法改正により電子提出の義務が発生するようになります。
家事事件の手続については少し遅れて令和10年6月までにデジタル化に関する改正法が施行されることになっていますので、手続がどのように変わるかについては引き続き別のコラムにて紹介したいと思います。

