別居する段階等で財産分与に関する書面に署名することのリスクとは?
別居前の財産分与に関する合意とは?
別居の前の段階で財産分与に関して念書を書いてしまう・書いてもらう,結婚の段階で財産分与の合意をしておくというのが想定している話です。結婚段階ですでに合意をしておくことはあまり考えにくいところではあります。そのため,今回は別居の前の段階での合意の話を中心に触れておきます。
例えば,別居前に相手に財産分与の請求はしないという書類に署名をしてもらう,あるいはかなり多くの金額を支払うという書類を書いてしまうという場合です。書いてもらう場合にしても,書くように促されて書いてしまう場合であっても,そこに至る経緯があります。
一番は各段階で実際に大丈夫なのだろうかという話を考えておくことですが,問題になるのは,後で不利な内容だから何とかしたいという場合に問題となってきます。分与財産が実は多そうな場合には,無効であってほしいところですし,逆の場合であっても同じく無効であれば負担が小さくなるためです。
この話とは別に,口頭で喧嘩の際などに合意をしたという場合には,相手が争ってきた場合に,実際にそうした合意があったといえるのかを含めて問題になることがあります。ここでは裏付けなどの有無が問題になって来ますが,ハードルが高くなる可能性があります。
法改正による影響と無効になる場合とは?
令和8年4月の法改正の施行に伴って,夫婦の間の合意の取り消しの制度がなくなりました。これは裁判例も踏まえると,夫婦関係が破綻する前にした合意は自由に取り消せるという制度でしたが,適用範囲を裁判例上制限していたこともあって,廃止されています。令和8年3月までに行った夫婦の間の合意についてはなお適用されるので,今後もしばらくはこの取消の制度適用が問題になるケースはありえます。ただ,別居前といっても破綻している場合に合意がされることも多いでしょうから,どこまで適用されるのだろうかという問題はあります。
このほかに,無理に合意をさせられたという場合には,強迫されたということでの取消しの可能性もあります。この場合には内容もさることながら,合意をした際の事情がかなり問題になってきます。このほか真意ではなく合意をしたという場合もありえます。夫婦喧嘩等をした際の経緯によってはそうしたこともあるかもしれまん。相手方が認識していたようなケースであれば,無効を主張することができます。
これに対して,有責配偶者からの離婚請求になってしまう等の事情があり,大きく支払ってでも離婚をしたいという事情があった場合には話が異なってくるでしょう。早急に離婚をするために相手に有利な条件の提示をした場合には,真意でないということは考えにくいし,何かしら強迫されたという場合もそう簡単には考えにくいように思います。
いずれにしても,何かしらの書面に署名してほしいという話が出てきた段階では,対応に注意が必要でしょう。

