妻から,私のモラルハラスメントを理由に離婚と慰謝料の支払いを求められています。どう対応すればいいでしょうか?
モラルハラスメントとは?
フランスの精神科医の方の定義づけが有名ですが,簡単に言えば言葉や態度による嫌がらせ等を内容とする精神的暴力ということができるでしょう。夫婦など家庭内以外にも職場などでも生じうるものです。
相手方に対する支配的な傾向を持つ場合もあり,精神的な打撃は非常に大きくなることもあるでしょう。
ただし,典型的な態度のケースが挙げられることはありますが,様々なものが考えられます。よく言われるのは,男性から女性に対するものですが,女性から男性に対するものもありえます。
単にモラルハラスメントがあったと言われても抽象的な点があり,実際にどう言った言動がご本人の間でなされたかが重要になってきます。
モラルハラスメントは離婚理由になるでしょうか?
妻側との修復が難しいと考えて,離婚に同意をするならばもちろん離婚の理由とはなります。モラルハラスメントといっても,その原因とするさまざまな事実関係が存在するのか・婚姻を継続しがたい重大な事由に当たると裁判所に判断されれば,離婚裁判でも離婚理由となります。
ただし,夫婦間の他の事情を含めて考慮されますから,モラルハラスメントがあるから離婚裁判で離婚理由になるという単純なものではないという点には注意が必要です。
離婚に同意をするのかどうかは,離婚裁判で個々のモラルハラスメントの原因となる事実があるかどうかについての記憶は一つのポイントとなります。もう一つのポイントとして,そうした事柄の真偽は置いておくとしても,そこまで言ってきている妻側との間で修復が図れる見通しを描けるかというのもあります。
結局,修復が図れない状態では婚姻費用(生活費)の負担が続くだけの可能性もありますし,精神的な重荷になる可能性もあります。ただ,子供のことも考えてということもありえますから,様々な事情を考えて決断をする必要があります。
モラルハラスメントは慰謝料の支払い原因になるのでしょうか?
モラルハラスメントの原因となる事実の中には,精神的な暴力と評価されるものもありえます。もちろん,後で触れるように,そうした事実があったのか問題になるケースもありえます。ここでは,事実関係があったことを前提に記載します。
たとえば,長年身体的なコンプレックスに関する暴言を吐かれたような場合や相手の人格を否定する言動が続いていていた場合でその程度がひどいものについては,慰謝料の原因となることはありえます。ただし,何がそういったことにあてはまるかという問題があります。
また,どの程度続いていたものか・離婚決意にどこまで関わっていたのか・どの程度ひどい内容か等によって,その金額も異なってきます。そもそも,モラルハラスメントとされる言動に関しては慰謝料の原因となりにくいという点もあります。
モラルハラスメントの証拠と実際にどう問題になるのか?
妻側からモラルハラスメントがあったと言われた場合に,それを認めなければいけないかといわれれば,身に覚えがないものを認める必要はありません。特に,抽象的にモラルハラスメントがあった・暴言があったというだけではそう簡単に認めるという話にはなりにくいものです。
このことは,仮に妻側に本当にひどい言動をしていてもそれを否定してもいいという話を言っているわけではありません。あくまでも,身に覚えがないもの認めるのは避けましょうという話です。
実際に,モラルハラスメントに関しては,事実関係(指摘された言動があったのかなど)の有無が問題になるケースはあります。そうした場合に,立証する資料としては,そうした言動を録音・記録したものがなければ,人の話になります。この証拠だけで簡単に証明されたとはいえないのが,ここでの問題点になります。
同じことは,より一層男性側がモラルハラスメントを受けたという話にも当てはまりますが,事実関係に争いがある場合にそう簡単には認められません。
ただし,事実関係は争うにしてもどうやって解決をしていくのかは,先ほど触れた離婚をするかどうかに関わって譲れない線で早期の解決を図るかどうか・そのことを納得できる事情がご自身にあるのかで判断をしていく必要があります。