よくある相談

勤務先からの退職金は「どこまで」財産分与の対象になるのでしょうか?

退職金はまだ支払われていなくても,財産分与の対象になるの?

 退職金自体は勤務している職場・会社(公務員で常勤の方であれば,制度が設けられているのが通常と思われます)に,退職金の規定を定めているかによります。規定があれば,そこで定められている前提を満たせば退職金が支給されます。

 そのため,誰でももらえるわけではありませんが,問題となるのはまだもらっていないのに財産分与の対象として清算をしないといけないのかという点です。既にもらっている場合には現金か預金として残っている限りは清算されても問題はありません。

 

 結論から言えば,もらう蓋然性が大きいといえるのであれば財産分与の対象になります。ここでの「もらう蓋然性」とは何でしょうか?以下に続きます。

まだ定年退職まで相当期間がある場合はどうなるの?

 定年退職までを考えてみると,最近は法令の影響はあるものの60歳に近い年齢と40歳くらいの年齢では期間が相当異なります。退職までの期間が遠ければ遠いほど,別の理由で退職金がもらえない形での退職かもしれませんし,勤務先の破綻等によって退職金がもらえない可能性が大きくなってきます。

 こうした「もらえないかもしれない蓋然性」が小さければ,「もらう蓋然性」が大きくなってきます。言い換えれば,定年退職を考えると年齢が若いほどにそうした蓋然性が小さくなってきます。そのため,40歳代で退職までの期間が10年を大きく超えるようなケースでは,退職金を財産分与の対象に含めない場合が増えてきます。「全て」と簡単にいえないのは,勤務先の規模や安定性などの事情から同じ年齢でも「もらう蓋然性」は大きく異なってくる可能性があるためです。

 ただし,最近では,退職金規定で支給額がはっきりとわかる場合には,退職金をもらえる蓋然性や金額がわかるということで,退職まで相当期間(10年を超えていても)があっても財産分与の対象になるという見解が有力になっています。そのため,退職金支給規定が整備されていない場合や退職時まで金額がわからず,退職までの期間が10年を超えて大きくあり支給の蓋然性があるとは言いにくい場合には,支給対象にならないという言い分を出すことになるでしょう。この際には,今述べた最近の有力な見解に基づく反論等があることは頭に入れたうえで,その他も考えて対応を決めて行くことになるでしょう。

 

退職金が財産分与の対象になる場合は,どこまで対象になるの?

 特に中高年の方の離婚「熟年離婚」と呼ばれるケースで,退職金が財産分与の面で大きな問題となってくることがあり得ます。退職・支給が迫っていることや金額が大きくなり,将来の生活に関わってくるためです。

 

 人によって様々ですが,就職後結婚をした場合・結婚後就職(転職)した場合のいずれであっても,妻側が貢献したのは現在の職場に就職をした後の期間で・結婚後別居(離婚)までの期間となります。そのため,当然に退職金のすべてが対象になるわけではありません。ただし,裁判所の判断の中では全額がもらえる蓋然性が高いところまで貢献をしたということで満額での支給額を対象としたものもあります。

 そうはいうものの,貢献期間は先ほどのところですから別居(離婚)までの想定金額に対する貢献を考えていくケースが多くなっては来るかと思われます。このほか,熟年離婚のケースでは退職金が多額となってきますので,支払い時期をいつとするのか(離婚時に清算をする・退職金支払い時に清算をする)という問題があります。

 

 ちなみに,ここまでの話は妻側が専業主婦あるいはパート程度の仕事をしていることを主な前提としてきました。これに対し,例えば公務員のように退職金額が多く勤続の可能性も長い仕事を妻がしている場合には,妻側の退職金も当然財産分与の対象になりますし,ここで今まで述べてきたことがそのまま当てはまります。そのため,公務員などの仕事を妻がしているケースでは,お互いの退職金を考えてみると夫側のみが一方的に分与をするという話が当てはまらない可能性もありえます。

 

 ご自身の事情などを考慮して対応を考えていく必要があります。金額が大きいだけに弁護士に相談して対応を考えるのも一つの方法でしょう。

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