妻側から離婚を切り出され,そのペースに合わせて話を進められています。公正証書の案が作成されたのですが,注意点はあるのでしょうか?
公正証書の意味合いとは?
公正証書は,公証人が作成する書面で,離婚との関係でいえば協議により決めた内容を書面化するのに使われます。大きな意味としては,法律上認められている裁判をすることなく,お金の支払いに関する事項の差し押さえができる点です。
差押え自体は裁判所への申し立てを必要とします。ここは公正証書で取り決めても,取り決めなくても変わりません。ただし,公正証書でない場合には別途約束を守って支払うよう裁判を起こす必要があり,この手間をなくすことができます。ここでのお金の支払いは,財産分与や慰謝料に関する事柄・養育費等があります。特に支払い期間が長い養育費については先ほど述べた理由もあって,妻側が親権を持つ場合には公正証書の作成を求められることがあります。
一度公正証書などに署名・捺印した後に内容を変更できるか?
先ほど触れた養育費に関わる事項やその他のお金に関する事柄,面会交流に関する事柄など公正証書に盛り込むことができる事柄は,様々あるところです。一度取り決めた事柄は,決めた際に予測できた事柄に基づいて決めているはずなので,そう簡単には変更をできません。
公正証書を作成する際には事前に内容を確認し,問題がなければ署名と捺印をすることを求められます。一度こうした事柄をした場合には,原則として慰謝料などの金額や養育費の金額が高すぎること等を理由に変更を求めることはできません。
そのため,公正証書の内容確認や署名捺印を求められた際には,その吟味をしっかり行う必要があります。様々な事情から離婚時の話のつけ方は様々ありますが,そうした事情や後悔が出ないかなど確認は必要です。
養育費などの金額が高すぎるから離婚の合意は無効であるという言い分は認められる可能性が低い点が原則としてあります(特に第3者かつ専門家である公証人が関与している公正証書ではなおさらです)。そのため,後で無効だという言い分もそう簡単に認められるものではないという点も意識は必要です。
弁護士への依頼や相談はした方がいいの?
先ほど述べた確認を行う際に,専門家である弁護士などへ相談をすることは有効な方法の一つになるでしょう。様々な事情を考慮しても,金銭面で金額が適正かどうか,特に養育費は支払いが長期にわたる可能性がありますから,注意が必要でしょう。
こうした点の確認とアドバイスをしてもらうことは先ほど述べた問題点を減らすのに役立つでしょう。実際に依頼をするか・どのような依頼を行うかという点はケースごとの事情によって異なる点です。既にある程度話がついていて,早期の解決を目指すのであれば弁護士が交渉を行うことで妻側が警戒などをして話が進まない可能性も出てきます。この場合はアドバイスを都度貰う形での相談や援助という形の依頼というのはありうるでしょう。
他方で,一方的で到底納得できずある程度ご自身の言い分が反映されないと解決したくないお気持ちが強い・その他話し合いが進まない状況があって,解決にある程度の時間がかかりそう等という場合には交渉を依頼する(状況によっては調停も考える)ということもありうるでしょう。
いずれにしても,ご相談のうえで依頼するのかどうか・依頼するならどのような形がいいのかは考えた方がいいでしょう。