よくある相談

離婚の際に,それまで未払いであった生活費(婚姻費用)はどうなるのでしょうか?

すでに具体的な請求を受けていた場合

 生活費(婚姻費用)の支払い義務は結婚している限り生じるものですが,数字として問題になってくるのは別居してからです。現状の裁判所での取り扱いでは,具体的な請求を受けてから具体化すると考えられています。ここでの請求とは,調停の申し立てが一般的ですが,それに限らず具体的金額を示しての請求があった(このことに争いがないことが前提です)月からとなります。もちろん,お互いに合意をしていればその月からとなります。

 

 離婚成立までにこうした生活費(婚姻費用)の話し合いも行い,一緒に解決を行うのであれば未払金額がどうなるのかという問題自体は起こりません。問題はこうした解決がなされない場合にどうなるのかという話です。

 2020年1月に出された最高裁の判断では,一度具体的な請求によって,具体化した離婚までの生活費(婚姻費用)は離婚によってなくなるということはない(ただし,離婚後についての生活費は支払い義務は出てきません)という判断を示しています。問題となったケースでは,離婚調停で離婚に至ったものの,その場では財産分与と清算に関する合意をしておらず,離婚調停で離婚の合意をする前に生活費(婚姻費用)の支払いを求める調停の申し立てがなされ,こちらは話し合いがつかずに裁判官の判断に至ったというケースです。

 お金の面も含めてこの問題を解決するケースが多いのではないかという印象を受けますが,諸般の事情を考慮して離婚だけ先に成立をするという解決もありえます。ただし,この場合は財産分与か生活費(婚姻費用)の支払金額等についての紛争が残る点には注意が必要でしょう。

婚姻費用の支払い義務はいつまででしょうか?

 先ほど紹介した裁判所の判断は離婚後であっても,離婚前の生活費の負担は残るという点を述べているため,少しわかりにくいところです。整理をすると,離婚が成立すれば,その後の生活費(婚姻費用)の支払い負担は生じません。離婚成立前別居後の生活費(婚姻費用)については,具体的な請求によって支払い義務が具体化している限りは,支払い義務が生じます。

 

 先ほどの裁判例でも,調停を申し立てることで具体化していたのであれば,それ以降離婚調停で話がつくまでの期間の生活費の支払い義務が生じるということになります。こうした点もあり,他のお金の条件と生活費の支払いがどこまで続くのかを考えて,どこで解決をするのかは特に男性側は支払いを求められるケースが多いこともあり,注意が必要となってくるでしょう。

離婚の際の財産分与などでの考慮は?

 他のコラムでも触れていますが,離婚の際の財産分与の中で諸般の事情の一つとして未払いの生活費(婚姻費用)の支払いも考慮に入れて解決をすることができます。先ほどの裁判例のケースでは,こうした点の考慮がされておらず,そもそも財産分与と清算が住んだという形の合意がないために問題が起こったといえるでしょう

 

 問題を一気に解決する点では財産分与での考慮とその後の請求をおkなわないという合意(清算条項というものです)をすることにはメリットがあります。ただし,金額面での条件がかけ離れている場合で,諸般の事情(この中の一つには生活費(婚姻費用)の支払い義務の継続を嫌うということもあるかもしれません)から先に離婚の点の話をつける(親権者の合意も必須です)場合には,先ほども触れましたが,問題は続くことになります。

 ちなみに,未払いの生活費(婚姻費用)の点は離婚後2年以内に求める必要のある財産分与の中でも考慮はされる可能性のあるものですが,先ほどの裁判例の判断ではこれとは別に調停の申し立てなどで生活費の支払いが具体化している部分はその支払いを求めることができる(支払いがない場合には差押えもありうる)ということを述べています。離婚の時点ではこうした点も考慮に入れてどこまで決着をつけるのか・決着の内容を考える必要があるでしょう。

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