よくある相談

児童手当や高校の授業料無償化・就学支援金は養育費や婚姻費用にどのような影響があるのでしょうか?

婚姻費用や養育費の金額を決める際の事情とは?

 2019年12月に養育費や婚姻費用を決める際の考慮要素などを再度検討したいわゆる算定表や算定式の新しいバージョンが公表されました。簡単な考え方は別のコラムでも紹介していますが,考え方はこれまでのものとそこまで大きくは変わりません。

 養育費や婚姻費用を考えるにあたり大きく考慮されるのは,ご自身と妻側の収入・子供の人数と年齢(15歳以上かどうかが一つのポイントになります)になります。こうした算定された数字を修正する要素があるのかどうか・収入としてどこまでを含めるのかどうかが問題となるケースが出てきます。

 今回取り上げる児童手当や就学支援金等も子供に対して支払われる(就学支援金は学校に直接支払われます)ものであり,子供の生活などにとっての負担を減らす方向に働く点はありますので,こうした点が生活などのためのお金の必要性を減らすものとして養育費や婚姻費用を決めるにあたっての修正要素となるかどうかは問題となりうるところです。

児童手当や就学支援金はどう考慮されるのでしょうか?

 結論から言えば,児童手当も公立高校授業料無償化(平成26年4月以降入学の場合には就学支援制度に変更)の場合も養育費や婚姻費用の金額に影響はありません。

 そもそも,高校授業の無償化は法律で定められたもので,高校に通う場合の経済的負担をあげて・教育の機会均等を図るためとされています。就学支援金も同じ趣旨に基づくものです。就学支援金については,在学をしていることや収入の要件等の要件が設けられています。このお金自体は子供あるいは保護者が受け取るものではなく,通学する学校が受け取り授業料に充てるという性質のものになります。授業料以外に充てることはできません。この制度は公立高校だけと思われがちですが,その他の区分で私立高校も対象にはなっていました。2020年春からはこの私立の高校について加算が厚くなります。詳しくは文部科学省のサイト等をご覧ください。

 こうした給付金は収入ではないかという反論をしたくなるところですが,先ほど述べた趣旨もあり裁判例では明確に考慮しないものとされています(厳密には就学支援金制度の前身である高校の授業料無償化と子ども手当に関する判断となります)。201912月に司法研修所が公表した「養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究」(司法研修所編)においても,公立高校に関する就学支援金について同様の趣旨の事柄が述べられています。敷衍すると,子供の教育を受ける機会均等のためのおお金であるので,養育費などを決めるうえでの修正の材料にはならないというものです。この考え方はいわゆる算定表や式とセットになって公表されているものですから,家庭裁判所での判断などでは大きな影響力を持つと考えられます。ちなみに,2020年春から始まる私立学校へ通う子供の加算についてはその女性の趣旨を考慮して養育費などの修正要素となるかどうかを判断すると述べられています(前記研究の45頁の注)。

 こうした考慮は離婚の前後では変わらないと思われますので,婚姻費用についても同様です。児童手当についても私的な扶助(養育費や婚姻費用)を補助する性質のものであるため,同様に養育費などの金額を修正する要素ではないと考えられています。

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