よくある相談

養育費の一括請求をされた場合に,どのように対応すればいいでしょうか?

養育費の一括請求とは?

 養育費は,離婚時に子供がいる場合にその子供の生活費を法律上の扶養義務に基づいて支払うお金のことです。性質上,都度発生するものなので,毎月いくらという決め方をするケースが多くなります。養育費を決める際には,毎月の金額といつまで支払うのか(20歳までとするのか・大学卒業までとするのかなど)を取り決めることが多くなります。

 これに対して,同じように毎月当たりの金額と終わりまでの時期を考慮して,先払いで一括して支払ってもらうというのが養育費の一括請求です。ケースとしてはそこまで多くはないように思われますが,こうした請求がなされることもあります。支払う側からこうした提案をすることもありうるでしょう。

養育費一括請求の意味合いと応じる義務の有無

 養育費の一括請求の意味合いは,請求側にとっては確実にまとまったお金を確保できる・支払う側にとっては,まとまった負担が生じるものの,基本的にはその後の支払い義務がなくなるという意味合いがあります。現在,いくつかの自治体の政策あるいは国で養育費の未払いの問題についての検討がなされていますが,養育費の支払いは,それが18歳であれ・20歳であれ22歳であれ,相当長期間に及びます。こうした未払いリスクを避けるという意味では,請求側にとっては確実な支払いを求めるメリットは存在します。
 
 ただし,後でも触れますが,一定の事情変更を見込んでのものですから追加請求のハードルは相当な高さになる可能性があります。

 そして,支払いを求められた側が,こうした一括請求に応じる義務があるか(一括支払いをするという内容の合意をする義務があるのか)といえば,結論から言えばありません。実際にはケースによりけりですが,一括支払いをすることでのメリット(負担が基本的にはなくなること)とデメリット(面会交流を含めた交流が持てなくなるのではないかという不安感・支払いのためのお金が相当多額になり調達が難しい)を考えて決めていく必要があります。ちなみに,交流がなくなるという不安感ですが,こちらは個々の方の感覚的なものでしかなく,妻側の対応やこれまでの経緯からどの程度そうした可能性があるのかを考えていく必要があります。
 実際には面会交流の調停などの制度がありますし,離婚の条件で面会交流などの交流に関する事項をどこまで盛り込むことができるのかにもよりますが,違反への対応(ペナルティ)には弱い面もあります。こうした内容や制度の意味合いも含めて現実的にデメリットとして感じるものなのかを見極めていく必要があるでしょう。

 また,このほかに,養育費の使途自体は規制をできるものではないので一括支払いすることで使い果たされるのではないか(それが子供のために使われる場合もあれば,残念ながらそうではないケースも中にはあるかもしれません)という懸念が強い場合(こちらも過去の事柄などから判断していく必要があります)には,その現実度を見極めていく必要があるでしょう。後で触れますが,こうした場合であっても追加請求のハードルは相当高くなる可能性があります。

追加の請求や減額の請求は可能?

 結論から言うと,通常の養育費の取り決め以上に変更へのハードルが高くなる可能性があります。これは,まとめて支払いをする場合には,支払い対応期間の間に元夫婦それぞれにある収入の変動その他の事情変更があることを踏まえて,それでもまとめ払いで構わないということで取り決めたと考えられるためです。

 養育費の支払いについては,取り決め時点での金額(毎月)や終わりの時期について取り決め時点で予測されるその後の事情変更を踏まえて取り決めをしたと考えられています。そのため,すでに考えられている事柄についてはその後いくら変更があったからと言って,増額減額の理由とすることはできないとされています。多くのケースでの取り決め(毎月いくらをいつまで支払う)というものであれば,そこまで先の変動を考えていないことも多いでしょう。
 これに対して,まとめ払いのケースではその後数年あるいは10年以上の間に変動があることを想定して取り決めをしていると考えられているため,ハードルは上がるとされています。

 特に元妻側が理由はともかくとして早くに使い切った場合には,それを理由とした追加請求はやりくりできたのではないかという考慮も働くため,かなり難しくなります。とはいえ,こうしたケースでは子供自体から扶養料の請求がなされることもありえます。ここではやりくりできたのではないかという話は妥当しない点もあります。形態によっては負担が当然には,なくなるわけではないという点には注意が必要です。

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