よくある相談

婚姻費用や養育費の算定で,収入や経費の記載に疑義がある場合はどのように扱われるのでしょうか?

意図的な収入減少ではないかという指摘

 特に自営業や会社経営者ということになると,売り上げや経費のコントロール・役員報酬を意図的に少なくしているのではないかという指摘を相手から受けることがありえます。これは,夫婦双方の収入をもとに生活費(婚姻費用)や養育費の金額を考えていくためで,支払う側の収入が少ないと金額が下がりますから,請求をする側としてはこうした指摘をすることはありえます。

 その内容としては,確定申告をしている方については経費を上澄みしている(売り上げから各種経費を差し引いて収入金額を出します)のではないかという話(経費が多くなるほど収入額は減ります)や役員報酬について意図的に下げているのではないかという話等があります。
 このほかに,理由のない退職による場合もありますが,この場合には退職理由の内容によって,賃金統計程度あるいは前職の給料などを基準とした収入があるのかといった点を考えていきます。

 役員報酬については,会社が法人成りや家族経営の場合,社長(代表者)の意向次第で金額を変えられるのではないかという側面があります。実際,役員報酬を下げたという指摘については,これまで聞いていた収入額から下がっているという話や特に会社業績は変わっていないはずといった点の指摘があります。こうした点への対応は,役員報酬のこれまでの経緯や仮に別居後その他の時期に役員報酬が下がった理由を示していく必要があります。
 ここで問題となるのは,支払い逃れと考えられても仕方がないような不自然な役員報酬の減少かどうかという話です、そのため,例えば,業績の悪化はもちろん・役員借入の返済などの理由で一時期無理に多い役員報酬としていたのを元に戻した等の理由を説明することが必要です。そのうえで,その裏付けとなる資料や証拠も準備しておく必要があるでしょう。自社の情報を開示することへの抵抗感はあるでしょうが,算定の上での収入が同考慮されるのかも踏まえたうえで,説明がつくのかどうか・資料との整合性はどうなのかなどを整理して対応を決める必要があるでしょう。

 このほかに,個人営業の場合に帳簿外に売り上げがあるのではないかという指摘がなされることも想定されます。ただし,このような場合にはそうした帳簿外の売り上げを示す資料などを指摘する側が示す必要があります。示された場合には,それが実際になんであるのかなどの説明が必要になります。

 ちなみに,同族経営の会社に勤務して給料をもらっている場合にも,給与減少の理由が問題となることもありえますが,ここでも減少の理由(恣意的な現減少)ではないことを示していく必要があります。

経費を水増ししているのではないかという指摘

 確定申告をしている場合に,各種の経費が記載されていますが,そのすべてが生活費(婚姻費用)や養育費の計算上考慮される(差し引きができる)わけではありません。これは税務上経費として扱うものとの違いがあるためです。特に実際は支出をその時にしていない項目について出てくる可能性があります。
 そのため,確定申告書1枚目で収入となるべき金額が少ないあるいはマイナスの際にその内訳がどうであるのかといったことで問題になることがあります。その場合には確定申告書の経費の内訳が記載されている部分や総勘定元帳などの経費などが記載されている資料が何であるのかが問題になります。

 経費の内訳から見て考慮されるものであるのかどうかという話なのか・概略から見ると差し引かれる経費に見えるけれども実際には,例えば家計支出とみられるものを経費計上している(水増しである)というものなのかどうかは別の問題になります。前者は経費の内訳を見せてほしいという話で開示をするという話になりますが,後者については水増しといえるだけの根拠があるのかどうかも重要になります。特に実際の経済力とかけ離れた収入水準が示された場合には問題となることがあります。
 本来差し引きが難しい経費や水増しの場合には,この点を考慮せずに収入や生活費(婚姻費用)・養育費の金額を考えるのは難しい面があります。話し合いの場合には,経費面などでの状況も踏まえて,どこで調整をつけるのかを決める場合も出てくるでしょう。

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