よくある相談

大学に通う子供の婚姻費用・養育費の支払いについて,子供のアルバイト給料や奨学金は考慮されるのでしょうか?

アルバイト給料や奨学金の性質

 離婚に関する問題が子供が大学生になるかどうかの時期に生じている場合,大学費の学費に関する考慮を妻側から求められる場合があります。他方,特に子供が大学に進学している場合には,奨学金を借りる・受給する,アルバイトをし有料を得ているということは十分ありうるところです。婚姻費用にしても,養育費にしても,子供の生活費部分に対する扶養が含まれますので,子供自身の自助能力があるといえれば,それを含むべきだという考えが出てくるところです。

 奨学金は給付型(返済が不要)なものもあれば貸与型(昔の日本育英会・現座の日本学生支援機構の奨学金等)も存在します。後者については保証人が求められるなど将来の返済が必要になるという性格が存在します。アルバイトの給料は,単発のものなのかある程度継続的なものなのかといった点で,収入の継続性に違いが出てきます。

 アルバイト給料や奨学金の考慮を求めた際に反論で出てくる話として,貸与型の奨学金であれば将来返済が必要になるので考慮すべきではない・アルバイト給料については,学業優先の範囲で行う不確実かつ少額のものなので考慮すべきではないというものが考えられます。この反論自体は型通りのものですし,アルバイトをしている・奨学金をもらっているから当然に考慮というのも型通りの点があるように思われます。

 まず,奨学金は給付型であれば単なる借入とは言えないので,考慮しないという理屈は難しいように思われます。貸与型の場合には返済が予定はされていますが,現在の生活を支える材料ともなっています。裁判例では貸与型の奨学金について考慮の対象としたもの・していないものがあり,一概には言えないものとなっています。男性側とすれば,考慮した裁判例を挙げて考慮すべきという言い分を出しつつ交渉をしてみるという話になろうかと思われます。

 次にアルバイトの給料については,アルバイトの状況によって変わってくるものと思われます。臨時のアルバイトしかしない場合や長期休暇の未アルバイトをしているということもあるでしょうし,日常的に週何度もアルバイトに出ることで相当程度の収入を得ている場合もありえます。これをすべて同じように考慮するというのは難しい面があるように思われます。裁判例の中には,考慮すべきであるとしたもの・考慮すべきではないとしたものがあります。考慮していないケースでは,長期休暇期間中に行ったもので収入額も少ないこと・普段は通学に時間がかかるということを理由に挙げており,日常的にアルバイトを行うとはいいがたいという点を言うものと思われます。ここからすると,通学距離その他の様々な事情から継続的に相応の収入を得ているのかどうかがケースごとに問題となってくるように思われます。

 言い分を出す際には,以上を踏まえた根拠を出していく必要があるでしょう。

考慮されるとして,どこまでの考慮がありうるでしょうか?

 裁判例上は奨学金(貸与型)やアルバイトの給料は考慮を認められたケースと認められていないケースが存在します。このうち,考慮を認められたケースでは,私学費の負担を加算するのは相当ではないという要素で考慮されています。このケースでは,私立大学に通う子供について,その学費の負担が問題になっていたものです。

 いわゆる養育費や婚姻費用を考える算定式や算定表では,公立中学・公立高校に通うことを想定しているものですから,それを超える部分は別途負担が問題になってきます。こうしたケースでは一般に父母の収入に案分して考えるということになりますが,私学であることを理由とする部分までの負担を支払い側(男性側)に求めないということで考慮されています。
 ちなみに,このケースでは,子の学費などのための借り入れを支払うべき側(男性側)がしたために返済負担を行っている点を考慮するかのような話がありますが,女性側も同様に借り入れをしている場合には考慮をしないと述べています。要は,生活費や学費のための借り入れ返済は考慮されえますが,元夫婦お互いがどうかが問題となります。

 いずれにしても,考慮される可能性のある場合か・どこまでの考慮がありうるのかを頭に入れておく必要があります。

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