不貞行為を行った有責配偶者からの離婚請求が別居期間が短くても認められる可能性はあるのでしょうか?
有責配偶者からの離婚請求を認めるかどうかの考慮要素
一般に不貞行為を行った・激しく暴行をふるう・家庭を全く顧みず生活費も入れない等婚姻関係が破綻した原因を作った側からの離婚請求は裁判例上大きく制限されています。こうした原因を作った側(有責配偶者)からの離婚請求の代表例は不貞行為をした側からの請求ですが,実際にはそれに限ったわけではありません。ただし,離婚の原因はお互いさまという側面や目立って一方のみに原因があるとは簡単には言えないので,有責配偶者といえる場合もそうは広くはありません。
不貞行為を行った側からの離婚請求についての有名な裁判例では,婚姻関係が破綻していても信義に反したものであるから制限されるとして,信義に反するかどうかの考慮要素として,同居期間や別居期間・未成熟の子供の存在や相手配偶者の社会経済状況などが考慮されます。様々な要素を考慮するので,ケースごとの事情によって結論だけでなく,同じ要素があっても他の要素の中身によって話が変わってくるという面倒な点があります。
よく別居期間や同居期間との対比が挙げられていますが,未成熟の子供(扶養を必要とする子供の意味)の存在や相手配偶者の経済力やお金の支払いをどこまでするのか等も考慮されます。裁判例の中には,有責配偶者とする方の責任の中身や程度・相手配偶者の行動面などから見た婚姻継続の実際の意思・別居後の生活関係の状況なども考慮すると述べたものがあります。
破綻の程度が大きな場合や相手にとって大きな負担を押し付けるわけではない・離婚を求められている側自体も離婚の意思を示す言動がある場合には,離婚を認めても信義に反しないといえる面はあります。離婚のためのお金の条件面が合わないというケースや心情的な面や子供のことを考えて離婚に応じがたいという場合は様々あります。実際の解決面(お金の給付を行うこと)や裁判所の判断に至った場合には,有責配偶者からの離婚請求であるというだけで厳しい判断が出る可能性もありえますので,対応には難しい面があります。
別居期間が短くても離婚請求が認められたケースとその考慮要素とは?
裁判例の中では,非常に短いと考えられる期間で離婚請求を認めたものがあります。ただし,重要なのはどこが考慮されたのかという点になります。
そのケースでは,妻側が不貞行為をしたという事情があったものの,夫側にも離婚を求めるという言動があったことや妻側を追い詰める言動が不貞行為に先行して存在したこと・未成年の子供の監護を妻側がしていたという事情が存在します。これは,破綻の原因や責任の程度において,不貞をしていない側にも相応の事情が存在したこと・離婚を認める言動が存在したこと・未成熟子の監護や不貞をされた側にとって過酷になるという事情がないからという判断が働いたものと思われます。
ただし,このケースの先ほどの判断は第2審によるもので,第1審の判断では有責配偶者からの離婚請求ということで・そもそも夫婦関係が破綻していないという判断とともに離婚請求を退ける根拠となっています。
未成熟子の監護や存在はあくまでも離婚を求められる側(不貞行為をされた側)が養育監護をする場合に大きく問題となりますし,経済状況は妻側が専業主婦あるいはパートの場合にはかなり厳しいこともありえます。お金の給付によってそうした事情がないとするためには大きな負担が出る可能性もあります。あくまでも先ほどのケースでは夫側も経済面で相応の収入があったという事情もありますので,男性側から不貞行為をしたための離婚請求という面では同様に考えられない要素も十分あります。
ご自身が子供の養育監護をしている・相手の経済状況や不貞までのお互いの態度や与えたダメージの内容や同居期間との関係で決まってくる要素なので,ハードルは相当程度ありうるということはやはり頭の中に入れておいた方がいいように思われます。