児童手当や児童扶養手当は婚姻費用や養育費の金額を決めるにあたって考慮されるのでしょうか?
原則として,金額算定にあたり考慮はされません
別居の際に,妻側が子供を連れて家を出て生活費(婚姻費用)や養育費を支払ってほしいという要求とともに児童手当などの支給先の変更(現況変更)を出すように求められることがあります。児童手当は,子育て支援のために,子供を実際に養育している方に支払うことで,子供を抱える家庭の家庭生活の負担を抑えることなどを目的として支給されます。
そのため,実際に子供を養育しているかどうかは重要かつ現在子供を監護していない方の親に支払ってその生活費とするのはその制度意義に反することになりかねません。こうしたことから,現況届の変更(提出のタイミングに注意が必要)や一度受給したお金のうち別居後に該当するお金は清算の必要が出てきます。
また,今述べた制度の意味合いから生活費(婚姻費用)や養育費の金額を決めるにあたっては,もらう側の収入として考慮されることは原則ありません。児童にあたる子供の成長のために使う補助のためのお金であるという性質から,家族の生活費を考える上での金額には含めるべきではないというのが基本的な理由になります。
実際に裁判所でこうした給付が金額を決めるにあたって考慮されるべきか争われたケースがあるようですが,今述べた考えと似た話から否定をしたものがあります。
例外的に考慮される場合はあるのでしょうか?
それでは例外的に考慮される場合はあるのでしょうか?筆者の知る限りでは考慮されるケースはないように思われますが,見解の中には例外的に考慮される場合もありうるとするものがあります。
その内容は,簡単に言えば児童手当は収入要件がなく,子供が一定の年齢であれば支給される点で生活保護費とは異なる点などを考慮し,支払いをする側の収入が極めて低い場合には考慮することがありうるとするものです(詳しくは,第3版離婚調停,秋武憲一著,日本加除出版社)。生活保護費は,収入がない方についての公的な補助制度であることなどから養育費や生活費(婚姻費用)を支払う側の収入として考慮されません。生活保護をもらう水準の収入(生活保護制度自体は原則申請がない限りは,いくら収入水準を満たしていても支給されません)であれば,少なくとも公平の観点から考慮されることはありえるように思われますが,他にどこまでが含まれるのかはっきりしません。
そのため,見解の中には例外の話を述べるものもありますから,例外的に考慮される可能性がある場合もありえます。ただし,かなり限定されるように考えた方がいいのかもしれません。