別居期間中における生活費(婚姻費用)の支払いや交流が,婚姻関係の破綻に与える影響はあるのでしょうか?
別居期間だけで,婚姻が破綻していることにはならない
離婚をするかどうか・実際は離婚をしようと思っているけれども条件面が対立している際に,相手の意向と関係なく離婚が可能であるか(離婚裁判で離婚が認められるのか)は一つの考慮要素になります。また,離婚をしたくない場合には,修復のめどがあるのかどうかという話しとは別に,実際離婚裁判で離婚が認められるのかどうかは一つの考慮要素となりえます。
一般に多いとされる性格の不一致や信頼関係の喪失は,様々なエピソードや別居のきっかけ(別居といえる状況なのか)が重要な話になります。裏付けがない場合に確実にはっきりするのは,「別居」をしているかどうかですが,「別居」もあくまでも生活基盤を共有していない・助け合っていない等の事実を評価したものに過ぎません。
別居をどのように考えるかは,きっかけとなった事実関係以外に,別居後の交流や助け合いの状況なども重要となってきます。婚姻関係が破綻している・修復が難しいといえる場合には,単に一緒に生活をしていないというだけでなく,何かしらの交流もない・助け合いも存在していないといえるのかどうかも重要となってきます。破綻しているかどうかには,修復する意思があるかどうか・そのための具体的な行動があるのかどうかも影響を与えます。特に,助けをすることもなく交流もないということになれば,修復のための行動もないことになります。そのため,交流や復縁のためのアクションがあるのかどうかは破綻しているかどうかに影響を与えます。当然,何も交流がなくアクションが取られていないほどより短い期間で破綻になる可能性が高くはなります。
ただし,実際にどの程度の期間になるのかは,別居までの同居期間や別居に至った事情などによって変わってきます。いわゆる有責配偶者の場合には,この話とは別の面での考慮も必要になります。
やり取りや婚姻費用を支払わないことの意味とは?
別居後全く交流もなくお互いが何をしているかわからない状況が継続していれば,当然修復困難との評価にはつながりやすくなります。ここでの注意点は,子供がいる場合の面会交流のためのやり取りや交流を行っていたとしても,それだけでは当然に婚姻関係が形骸化していないといえるだけの交流とはならない点です。離婚をしていても,面会交流という形はありますし,あくまでも子供の成長にとってのプラスという建前で行われる行動であるので,これだけをもって夫婦としての婚姻を続けようというやり取りとは言いにくくなります。この交流も全くしていない場合には音信不通としてさらに破綻に近づく可能性があります。
生活費(婚姻費用)を支払わないことも,扶助義務を守っていないということになるので,破綻につながりやすくはなります。ただし,相手が経済的に苦しいことを知りながら支払いをしないことは「悪意の遺棄」という別の離婚原因を作り出すことになりかねません。この原因などによっては,法律上の離婚原因をもっぱら作り出したということで有責配偶者になる可能性もあります。
ちなみに,婚姻費用を支払わない場合に,家庭裁判所への婚姻費用分担調停・審判の申し立て⇒審判という流れを経ていれば,給与などの差し押さえのリスクもあります。財産が存在する限りは差し押さえ・回収を受ける可能性があります。財産開示の手続きについてのペナルティの拡充や役所を通じての財産や収入情報を得るための手続きが取れるよう法改正がされています。単に,わからないだろうと考えている場合には思わぬ落とし穴が生じる可能性があります。