よくある相談

別居後,今費用の支払いをしないことが離婚において不利に考えられることはあるのでしょうか?

支払い義務差し押さえなどを受けるリスク

 別居後に婚姻費用(生活費)を支払わない場合には,家庭裁判所の調停や審判を経ている場合には差し押さえを受ける可能性があります。別のコラムでも触れていますが,給料のように継続的に支払われるものについては,現在の制度では一度差し押さえを受けると取下げのない限りその後の支払い部分を差押えされて今いかねません。

 支払いがない場合の調査の制度が民事執行法の改正により拡充(特に婚姻費用や養育費関係)されています。公への照会をされる可能性もありますし,財産開示の期日(裁判所で開催)に正当な理由なく出頭しない場合には刑事罰を受ける可能性もあります。

離婚請求を認められる・認めらなくなるリスク

 離婚請求の関係では,離婚が認められる・認められなくなるという一見矛盾したリスクが存在します。これは,離婚を求めていないか・求めてくるかで別の結論になりうるという話です。話し合いで決着がつかない(話し合いがそもそもできない場合を含む)場合には離婚裁判での決着となりそこでは法律の定める離婚原因が問題となります。長く別居して協力義務を果たしていないということであれば修復不可能という評価もできますが,「悪意の遺棄」と呼ばれる原因も存在します。

 一般に,遺棄とは法律上の夫婦間の協力や同居・扶養する義務を正当な理由なく果たさないことで,社会的・倫理的に非難されるという悪意という言葉と合わさって,特に婚姻生活の継続を破綻させようとする意向等のことを指すとされています。何が該当するのかはケースごとの事実関係を踏まえて考えていくことになります。ただ,突然家を出てその後経済的な支援もしない(婚姻費用を支払わない)状況で相手を窮地に追い詰めることはそうした事情があると判断される可能性が高くなります。期間が継続すれば婚姻関係を続けることが困難になってくるという評価がされる可能性も高くなります。

 

 そのため,離婚を求められている場合には未払いのお金の支払い義が残るとともに離婚が認められる方向につながっていきます。離婚後も未払いの婚姻費用の支払い義務は残りますし,仮に自己破産をしたからと言っても変わりません。時効により支払い義務がなくなることもありえますが,それは請求側が積極的な請求を行わない場合となります。逆に離婚を求めている場合には,離婚原因を積極的に作り出していることになりますので,有責配偶者からの離婚請求となりかねない場合も出てきます。信義に反して離婚請求が制限される可能性があります。

 

 悪意の遺棄と評価された場合には慰謝料請求が認められる可能性もあります。悪意の遺棄になるのかどうかは別居の経緯やその後のやり取りから見て,とった行動が正当な理由に基づくものですので,争いが生じた場合はきちんと事実関係の主張と裏付けの存在に注意をする必要があります。メールやラインのやりとりなどが証拠の一つとして考えられます。

 別居後もやり取りについても同様ですが,単にケンカをしたから気に入らないからというだけで婚姻費用の支払いを打ち切っただけの場合には,正当な理由ありとは言えない可能性があるのは注意が必要です。

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