よくある相談

子どもの学費が婚姻費用(生活費)で考慮される際の負担内容はどうなるのでしょうか?支払い不足部分はどこで清算されるのでしょうか?

子どもの学費が算定表・算定式上別に考慮される場合とその内容とは?

 いわゆる算定表や算定式では,中学校以降の学費について公立学校を前提としています。そのため,私学の授業料については考慮していない部分があることになります。私学といっても遠方の寮生活を送るところからそうでないところまで様々あるところですが,考慮されていない費用については別途その負担をどうするのかが問題となります。別途の負担ということですので,支払い側にとっては上乗せ負担が生じるということになります。同様の話は大学進学以降についても生じます。

 妻側が子どもを監護している場合に,その全額・半分・収入に応じて等様々な形で追加負担を求められる可能性があります。話し合いがつけばその内容で決まりであることは言うまでもありませんが,問題となるのは負担内容について話がつかない場合です。

 

 上乗せされるといっても,私学の学費(プラスして寮生活その他の費用)が当然に全額考慮されるわけではありません。まず,算定表や算定式(その考え方は「養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究」法曹会)に詳しく記載)では,一定の世帯年収に応じて公立学校の費用として一定金額が既に考慮されていることになります。既に金額として考慮されている部分を超える金額(この計算の詳細は触れませんが,想定学費÷算定表・算定式で想定している世帯年収×問題となっているケースでの世帯年収,によって計算した金額と実際の学費額の差額)が負担を分け合おう対象となります。

 次にどう分け合うのか(按分するのか)という話ですが,半分ずつという考え方もありますが,筆者が知る限りは収入に応じて案分するケースが多いのではないかと思われます。比較的最近の裁判例(東京高裁令和2年10月2日決定,家庭の法と裁判37号41頁)でも,夫婦双方に収入があった方のケースで,子どもの私立高校の学費などが問題となった件について,同様の考えに基づき,収入で案分した金額で負担を決めています(算定式や算定表で算出した金額に上乗せ)。ただ,裁判例の中でも大阪高裁平成26年8月27日決定(判例タイムス1417号120頁)では,算定方式では祖夫婦双方が生活費の原資となしうる金額が同等であることに照らして1/2ずつ負担すべきと判断しています。その当否や収入金額が潤沢でない場合には1/2により処理することが難しいのではないのかという趣旨の話が先ほどの判例タイムズ1417号の解説には記載されています。

 

 実際にどこまで1/2ずつの負担なのか・収入に応じてなのかは,はっきりとは確定していませんが,収入額の違いによって大きく負担の度合いが異なる可能性がありますし,支払われる側にとっても同様の話は言えるでしょう。支払いを求められている側は有利な方を主張することにはなるでしょうが,特に支払いを求めている側の収入は少ないけれども私学負担がある場合には収入按分の可能性が十分ある点には注意が必要でしょう。

支払い不足分の清算はどうなるのでしょうか?

 学費に関して支払いが決まった部分は,話し合いにより支払い時期を決めておけばその時期に関するものを取り決めないように応じて,一括あるいは分割により支払うことになります。これに対して,話し合いがつかない場合にはいつの時期からのものが婚姻費用(生活費)に関わる審判の中で支払われるのか・離婚時の財産分与で清算されうるものになるのかが問題になります。

 

 婚姻費用(生活費)の支払いを求める調停の申し立てをした時点からその請求の意思は明らかになっていますので,ここからの支払いになるのはそこまで問題にならないのが通常かと思われます。これに対し,別居後しばらくしてからこうした申立をした場合に,申立前の学費部分(その他生活費も)をどうするのかは問題になります。必ず清算されるというわけではありませんが,離婚時の財産分与で精算等が問題となるものの一要素となります。また,調停前の話し合いで何かしら決まっていた・請求が具体的になされればその時点からとも考えられますが,はっきりしないこともありえます。

 先ほど触れました比較的最近の裁判例(東京高裁令和2年10月2日決定)でも,調停申立前のやり取りから,証拠からは問題となる部分の追加請求をているとは認めがたいこと等から迅速に手続きを進めるべき婚姻費用分担の手続きなどではなく,離婚時の財産分与での手続きによるべきと判断しています。迅速性の考慮からは,証拠から簡易迅速に判断ができる場合には,婚姻費用の手続きによることになりますが,そうは言い難い場合には財産分与の手続きによることになってくるものと思われます。

 なお,いつの時期からかという問題は,今まで述べた請求時点というもののほか,請求された側が認識したときなどいくつかの見解がありますが,いずれにしても明確な証拠がないとはっきりしないということは言えるでしょう。

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