よくある相談

婚姻費用や養育費の減額事情に,取り決めに近い時期での減額請求や定年退職等による収入減少の考慮は可能でしょうか?

取り決め後短期間であっても事情変更は認められるのでしょうか?

 一度調停や裁判(離婚後の養育費)で決まった婚姻費用や養育費を取り決め後,そこまで時間が経過せずとも(例えば1年以内)減額の申し立てをしたいと思うことがあるかもしれません。離婚による手当などの減少の他に単に支払いがしんどいという話や原因は様々ですが,収入の減少が考えられます。

 一般に取り決め時に想定していない事情の変更が必要と考えられていますので,取り決め時に近いほどに事情変更が考えにくいうえに,取り決め時に想定できた話ではないのかという点が問題になります。実際,こうした事情が当てはまることはありますから,ハードルが高くなる可能性はあります。

 

 そのため,取り決めからそれほど時間が経過していないにもかかわらず,減額申立をするにはそれだけクリアできるだけの事情が存在するのかどうか・その事情によって減額がどこまでなしうるのかどうかの検討が重要になってきます。やむを得ない退職や病気・再婚と新たな子供が生まれたなどの事情があれば比較的わかりやすくはなりますが,離婚前の婚姻費用の場合には最後の事情はそうはないものと思われます。

 取り決めてそこまで時間が経過していない場合には,申し立てをする前提で特に婚姻費用で離婚問題をめぐる対立が考えられますが,いずれにしても対立が大きくなり話し合いでは解決しない可能性があります。そのため,いざ裁判官の判断になった際の見通しは重要となります。

定年退職による事情は考慮されるのでしょうか?

 特に離婚後の養育費の場合には,離婚の時期では稼働していたもののその後定年退職をしたため収入が大きく減ることも考えられます。この場合,再雇用がなされたとしても収入が大きく落ちる可能性がありますし,その金額も大きくなる可能性があるので,減額が相当となる事情変更となりうるものです。ただ,一方で定年退職がいつなのかどうかは就業規則その他で決まっているので,離婚時に予見できたのではないか⇒事情変更として考慮すべきではないのではないのかという点が問題となりえます。

 

 比較的最近の裁判例(東京高裁令和1年12月19日決定,判例タイムス1482号102頁)では,一度取り決めた婚姻費用を取り決めから1年以内に減額申立がなされたケースで減額を認めたものがあります。このほかに,定年退職による収入減少などを考慮したものとして広島高裁令和1年11月27日決定があります。

 東京高裁で判断されたケースでは,会社役員からの退職⇒再雇用⇒退社・退職による収入減少・65歳以上で年金受給は可能であったものの受給しない場合の年金支給相当額分を収入額で考慮するのかなどが争点となっています。このケースでは,前者について,取り決め時に蓋然性がある程度あるものと認識はされていたが,確実とまでは認識をされていなかった(収入額が前の取り決め時に争いがあった点などを考慮)ことなどから減額事情として認めています。後者については,年金支給額相当額を収入として考慮しています。この場合に年金支給相当額は仕事をするうえでの経費がかからない点を考慮しています(算定表や算定式の考え方ではこの経費がかかることを前提に基礎収入を算出していますので,経費分がかからないと基礎収入額がその分高くなります)。

 ここでは支払い側が受取可能な年金支給相当額を給与収入に換算して支払うべき金額を判断しています。このケースでは実際にはより高額の年金支給額を受け取ることはできたのではないのかが問題になっていますが,まだ実際には受け取っていない(受給をしないことから収入算定ができるのか・いくらかが問題になっています)ことから,受け取り可能と確実に考えられる金額を基に算定するとしています。賃金センサスを含めて一種のフィクション的な収入算定である点を考慮したものと思われます。

 

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