よくある相談

面会交流条項が順守されない場合の「間接強制」とは?最近の裁判例から①

間接強制とは?認められる場合とは?

  離婚時に妻側が親権を取得する場合に,面会交流の規定を置くことができます。具体的な内容は都度取り決めるために「月1回程度で内容や方法はお互いが子どもの福祉を配慮して取り決める」という内容のものから,「毎月〇曜日午前〇〇時から午後〇時まで,受け渡し方法は○○」というように具体的な取り決め(先ほどのケースでいえば,実施できない場合の代替日を具体的に取り決める)ことも可能です。

 タイトルにある「間接強制」とはお互いの合意や裁判所に命じられた内容を守らない違反が正当な理由なく存在する場合に,守るよう一種の罰金(合わせない1回ごとに○万円の支払いを命じる)を課す一種のペナルテイ的なものを簡単に言えばさします。「間接強制」が認められるためには,具体的な護る義務がはっきりしている必要がありますので,面会交流の具体的な内容が取り決められている必要があります。

 

 この取り決めなどの違反が存在して実施を求めても相手が応じない場合に,裁判所に対して「間接強制」を求める申し立てを行うことになります。通常面会交流が取り決め通り実施できない状況(特には交流ができない状況)があった場合かと思われます。ここで,子どもが交流したくないという意思を強く示している場合,監護している親(ここでのケースでは元妻)の意向や影響がうかがわれる場合等原因は複数考えられるところです。

 こうした理由が拒否を正当化する(「間接強制」が認められない根拠となる)のかどうかについては,合意や命じる内容が変更されない限り(交流が子どもの成長にとって望ましくない事情変化があれば交流の制限や禁止を申し立てることが可能です),正当化はされにくいように思われます。そのため,対立が大きくなる(交流させるべき・させるべきではないという対立)場合には,間接強制を求める申し立てと面会交流の制限の申し立てがそれぞれ裁判所になされることもありえます。もっとも,以下で紹介する比較的最近の裁判例では,子どもの交流拒否の意向の有無などの事実関係を検討しています。

 比較的最近の裁判例(東京高裁決定令和1年11月21日,全文は家庭の法と裁判37号74頁以下)では,二人の子どものうち特に一方とはほぼ一貫として交流の実施ができないケースで間接強制の許否が問題となったものがあります。決定文によると,子どもに強い拒否的な姿勢がうかがわれないこと(裁判所で確認をされたようです)・交流を含めた取り決め時点では交流実施が不可能とは考えられていないこと等の点から,交流拒否が元妻側の債務不履行と判断しています。

 

 取り決めの話し合いまでに交流実施が難しいのではないかという点が問題になることはままありますが,可能ということを前提に具体的な内容を取り決めるのであれば,そう容易には守らないことは正当化されない可能性があります。逆に,話し合いで交流内容を取り決めるという場合には,話し合いがまとまらないと再度裁判所の利用を考える場合も出てくるでしょう。

金額はどうなるのでしょうか?

 「間接強制」は守らないことについてお金の支払いを求めることで取り決めや命じられたことの実施を求める性質のものです。そのため,支払いを命じる場合には実施を促すのに必要な金額を決めて命じることになります。これは,ケースごとの事情によって異なりますので,面会交流の取り決めが守られない場合でもケースによってその金額は異なります。

 先ほど触れました東京高裁令和1年11月11日決定では,養育費の金額や月1回交流させるという内容であること・その他の事情を考慮して1回守らないごとに5万円と判断しています。これに対し,10万円を超える支払いを命じたものも存在します。例えば,東京高裁平成29年2月8日決定(判例タイムス1445号132頁以下では,1審で違反1回あたり100万円の支払いを命じたものを過大な金額であるということで,違反1回あたり30万円に変更しています。

 

 いずれにしても,5万円と比べれば相当に高額ですが,このケースの事実関係に照らして判断されています。決定文では,このケースでは子どもに面会交流実施に否定的な言動が見られたものの,監護している親の側の影響がうかがわれることやその親の年収が高額であること・間接強制を求める申し立てまでの経緯や申し立ての裁判での言い分などに照らし,少額の支払いを命じるだけでは実施が難しい点も考慮されています。

 「間接強制」を求める場合でも実際には交流の実施を求めることになろうかとは思われますが,先ほど触れた変更を求める申し立てへの対応も必要となるでしょう。結局は,実施へとつなげる金額であることの根拠を主張していくことになります。

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