よくある相談

預金の開示請求や家庭裁判所手続きでの調査嘱託での同意をしない場合に,一定の金額が推計されることがあるのでしょうか?

財産分与の対象となる預金の履歴を知る手段は?

 財産分与の対象財産には婚姻開始後に夫婦で築いた預金も含まれます。親から引き継ぐなどのものでなければ分与での清算対象になりますが,相手がお金の管理をしている場合には,預金の履歴などを開示してもらわないと分与対象になる部分は不明です。どの金融機関なのかなどの情報が分からない場合には,照会や開示の求めようもなくなります。ただ,開示を求めるにしても個人情報ということで名義人の同意がない場合には仮に家庭裁判所での調査嘱託という照会の手続きを行っても,照会の回答が出てこない場合がありえます。

 

 回答が来ない場合には,別居時点など財産分与の基準となる時点でどの程度の財産があるか不明確になりますから,清算をする対象となる金額が不明確になります。そのため,いくら制s難をするか不明確になります。となると,このことを狙って回答をしない・照会に同意をしないことが何かの利益になるのかが問題となってきます。この場合に預金の推計によって分与対象となるのかどうか・なるとしていくらになるのかという話が出てきます。

開示に同意をしない場合に,残高の推計が認められる場合とは?

 照会などがなされた場合には,明らかにすることが求められています。とはいえ,応じない場合に,提出などが強制されるわけではありません。こうした場合に預金額がいくらあるのかを推計で確認していくしかないことになります。この場合に,推計の一応の合理性と照会に同意をしないことなどを踏まえて推計に基づく算定を認めた比較的最近のケースに大阪高裁令和3年1月13日決定が存在します。

 このケースの争点は多く存在しますが,今回のテーマに関係するところとして,取引履歴の開示に応じない等の事情がある場合に,一応の合理性に基づく推計に依拠した判断を行っています。ここでの推計は,通帳に出てきた給与金額や児童手当といった入金額,出金となる固定的にかかっているあろう生活費などの金額から,入金額と出金額を推計しそこから残っている金額も推計するというものです。

 

 このケースでは1審での上記の判断の後に,2審になって別居ころの一時期の口座履歴を出して,特有財産などの存在などを主張して反論した点を以下の理由から排斥しています。その理由は①開示拒否などの対応が法律上要求されている信義に応じた手続きへの対応に反し,財産隠しを評価されてもやむを得ない事情であることに推計方法や内容に相応の合理性があること,を挙げています。このほか,明らかにされた履歴が断片に過ぎないことやそこから,特有財産であることも分からないことなどを指摘しています。

 

 単に,資料を開示しないことを理由にした判断ではありませんが,出金額・入金額が一定の金額が資料に基づいていること・それに基づき推計を行っていれば合理性は一応はあるので,この推計をもって財産分与の対象になるのか・金額はいくらになるかを判断しています。仮に,理由のある反論ができる場合には,資料を開示したほうがいいでしょうし,逆に反論を受けた場合には推計は崩れることになりかねません。こうした態度と推計による判断は,財産分与については「その他一切の事情」を考慮できるとされているので,その一要素ということもできるでしょう。

 

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