よくある相談

会社経営者の役員報酬の変更は養育費や婚姻費用を決める上で収入変更として問題となる場合とは?

収入変更として問題となる場合とは?

  多くの中小企業では会社形態とは言っても,社長あるいはその一族で全ての株式を持っているということで,本来株主総会などで決めるとされる役員報酬(給料収入として考えています)も自由に決めることができる側面があります。婚姻費用や養育費を算定するうえでの算定表などでは双方の収入が大きな意味合いを持つため,収入の減少を前提とするかどうかは,婚姻費用や養育費の取り決め(減額と言えるだけの事情と言えるかどうか)では大きな争いとなりうる点です。

 

 一方では減収をストレートに反映すべきとも考えられますが,一時期だけ役員報酬を減額し取り決め後すぐに元に戻すのであれば,恣意的な変更かつ実際には減収と言いにくい面があるため,役員報酬の減額の理由や経緯が問題となっていきます。特に理由がないのであれば,減収としてとらえるべきではないという考えもあり,実際に調停などでこうした前提で話が進む可能性もあります。

 役員報酬の減額には,会社の経営状況の変更(経営状況の悪化)・実際には難しい報酬額であったものを役員借入(会社からの借入)返済を金融機関等に求められそのための一時的な引き上げの場合もありえます。もちろん,恣意的な変更というのもありえます。ここ数年は新型コロナウイルス感染症その他物価高など相応の景気に影響された経営環境の悪化というものもありますが,実際に変更が必要なだけの状況化はケースごと・会社ごとの状況によって変わってきます。単に世の中の景気が悪いから自社も当然に悪いという話にはなりません。

 実際には,決算報告書などによる赤字なのかどうか・売り上げ状況その他先ほど挙げた事情から役員報酬の減額をその金額までしないといけない状況なのかを示せないと,減収分が考慮されない(実際には減収だがそうではなく婚姻費用や養育費が決められる)可能性があります。その際には,以前の同様の売り上げの時期・その他経営的に同様と考えられる際の役員報酬額は一つの参考要素にはなるでしょう。いずれにしても,役員報酬額が下がれば婚姻費用や養育費が下がるという簡単な話ではない・その金額までの減額が必要と言える事情が資料から言える必要があるという点には注意が必要でしょう。

 

 減額の場面ではそうは問題にならないでしょうが,このほか高額収入の場合に算定の方法をどうするのかも問題となる場合があります。

比較的最近の裁判例では?

 経営者の収入変更が問題になることは多いものと思われますが,比較的最近の裁判例の一つとして東京家裁令和3年1月29日家庭の法と裁判39号72頁を挙げておきます。このケースでも新型コロナウイルス感染症その他を原因とする役員報酬(夫側,妻側が婚姻費用を夫側に請求したケースです)の減額をどう考えるのか・高額報酬における算定表や算定式の修正を行うのか・稼働していない妻の収入をどう考えるのかなどの争点があります。

 

 これらはいずれも重要な争点と他のケースでもなりうるものですが,ここでは今回のテーマと妻側の収入に関して触れておきます。妻側の収入は稼働していない場合に当然にゼロというわけではなく,病気などの原因・幼い子供がいる場合にはゼロ円あるいはパート程度と評価されることがあります。特に幼い子供が乳幼児(2歳くらいまで・3歳までと考えることもありうるでしょう)までは稼働できないことを前提とすることもありえます。

 夫側の役員報酬減少は大きな相当となっております。新型コロナウイルス感染症の影響による売上上げ減額や影響がどこまで続くか分からない事での役員報酬減額が必要なこと・過去の同売上額での役員報酬額の考慮から,減額は相当とされています。

 

 このケースでは,新型コロナウイルス感染症の影響がいつまで続くのか分からない時期にあったから,こうした評価に至った面がありえますが,現在同じように考えられる明けではありません。あくまで,婚姻費用や養育費の請求がなされたころの役員報酬額を減額された時期についての状況でどうなのかが問題になります。売り上げ減などがあっても確たる理由なく,以前と比べて大きく役員報酬減額となっている場合には,相当言えない可能性も出てきかねません。

 このケースで相当とされたからと言って,他のケースでも当然にそうなるわけではない点には注意が必要でしょう。

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