離婚後再婚をし,再婚相手の連れ子と養子縁組をした場合に,前の結婚での子どもに対する養育費は減額されるのでしょうか?
事情変更にあたるかどうか?
離婚後の再婚や新たな子供が生まれる・連れ子の養子縁組は,離婚時に取り決めた養育費の減額請求のきっかけになりやすい原因の一つかと思われます。実際に減額事由になるかどうかは取り決め時に予測していなかった事情が生じているかどうかがポイントになります。
離婚時に既に交際相手がいて,離婚後即結婚と養子縁組をすることを考えていたケースはともかく,離婚後に高裁⇒結婚と養子縁組という場合には,新たに扶養義務を連れ子に対しても負うことになるので,事情変更とは言いやすくなってきます。もちろん,再婚相手にも前の結婚での夫が存在すれば,扶養義務の関係でその方とご自身のどちらが主に負うのか・分かち合うのかが問題になりますが,裁判例では養親による扶養義務が優先するという考え方が取られる傾向になります。
比較的近い時期の裁判例の一つ(札幌高裁平成30年1月30日決定・判例タイムス1459号110頁)でも同様な判断が示されています。このケースでは離婚時に公正証書で取り決めを行い,離婚後に再婚と連れ子の養子縁組を行った場合に,このことと減収を理由として養育費の減額を行うことができるのか・いくらになるのかという点が問題になったものです。このケースでは,先ほども触れたように,連れ子との養子縁組を事情変更の一つとしています。ただ,親権をとった側が養子縁組を再婚とともに行った場合とは異なり,前の結婚での子どもに対する扶養義務は残るため,どのように扶養義務を負うのかという問題は別に存在します。
算定の方法にはどのようなものがあるでしょうか?
算定の方法が問題となるのは,再婚相手(ここで想定しているのは女性)にも稼働する能力と連れ子に対する扶養義務を負っている点があるため,ここを同考慮するのかという点もあります。考え方は複数ありえます。
一つは,特に再婚相手に稼働能力がない場合に連れ子と前の結婚での子どもをご自身と前の妻との間で扶養する前提での算定表や算定式で考えるというものです。この方法には,再婚相手が負うべき義務も甘えの妻に負担させるという問題点が存在しますので,他の考え方の一つとして,再婚相手とご自身の収入を加算して,前の妻との間で収入に応じた扶養義務を連れ子と雨の結婚での子どもについて考えるというものがあります。このほかの一例として,再婚相手の収入も勘案して,算定表や算定式での連れ子の生活費指数を低くして調整する(その分再婚相手による扶養が考慮される)という考え方もありえます。
ただ,この考え方の調整だけで全てのケースで対応が十分とは言えない場合があります。例えば,先ほど取り上げた札幌高裁の判断のケースでは,生活費指数を調整する考え方を用いて考えつつ,そもそもの養育費等の取り決めをした公正証書での取り決め時の考え方を尊重しえたうえで判断をしています。このケースでは算定式での算定額を上回る養育費の取り決めを行っており,その趣旨は変更の場面でも考慮されるとし,ただ前の結婚での子どもだけ加算では同じ扶養義務を負う子供の間で不公平が生じるとして調整を行うべきであるとして判断をしています。
このようない,変更を行うにしてもどのように考えるべきなのかという点も大きく問題となりえます。