養育費を変更する場合に,変更後の金額となる時期はいつからなのでしょうか?
調停や話し合いによる場合
話し合いによる場合には基本的にお互い納得いく時点からになります。事情変更となるか裁判所の判断では微妙な点が残るケースや金額面で何かしら譲歩をどちらかがする代わりに,時期については別途折り合いをつけるといった解決策も考えられるところです。
問題となるのは,事情変更が生じていた時期から変更請求の時期まで時間が空いているケースですが,そうでない場合には合意をした時点(厳密には合意の翌月)から変更をするということで,減額請求の場合には変な感を生じさせない分早くああ減額を実現するということもありうるところです。あくまで,個別のケースの中身によるところですが,減額の根拠となる事情変更(特に養子縁組など大きく影響するケースがだいぶ前に生じていたケース)では今後の負担をなくすだけでいいのか・遡っての話を言うのかは金額や時間的な長さ・紛争の早期解決などの視点から考えてみる必要があるでしょう。
収入の増減の場合には,実際に減額事情になるのかが問題になることや減収が生じつつ当面支払いを今まで同様に支払う負担や最近減額事情が生じたという点もあるので,合意時(厳密にはその翌月)からという合意もケースによりありうるでしょう。
審判の場合,遡ることは?
審判では裁判官の裁量がはたらく面が相当程度ありますので,必ずしも調停の申し立て時や減額の申し入れ時にされるとは限りません。状況によっては減額の審判が確定した時点からと判断される可能性があります。事情変更の場合に,請求時とする見解・事情変更が生じた時点・判断が下された時点・増額と減額で分けて考える考え方などがありますが,あくまでも複数ある見解の一つになります。
減額を求める側からすると申し入れ時・ケースによっては事情変更が生じた場面を主張することは十分ありうるところです。裁判例の中でも客観的に明らかな時点からということで減額請求が明らかになった時点と判断するものもあります。
養子縁組を元妻側が再婚とともに行い(妻が離婚時に親権者となったことを前提とします),元夫側と音信不通であれば養子縁組がなされたかどうかわからないまま時間が経過するということもありえます。こうしたケースについて,事情変更時まで減額開始の時期を遡った裁判例として東京高裁平成30年3月19日決定25560772(離婚裁判での裁判上の和解が存在するケース)があります。
このケースでは,まさしく減額事情が生じたことがわからず減額請求ができなかったという点を元夫側に負わせるのは不当という判断を示し,減額請求時から減額とすべきという反論を排斥して判断を示しています。ただ,この判断では前提としてケースごとの事情に即して先ほど挙げたいくつかの見解等の中から裁判所が判断をするとあくまでもので,この判断自体が一般化をできるわけでもない点には注意が必要でしょう。何かしらの交流があって養子縁組を知ることができた(知っていた)というケースには当てはまらないでしょうし,あくまでも音信不通なまま相当前に養子縁組がされていたケースでは他の事情によるものの同様に言える可能性があるというものと思われます。