よくある相談

婚約関係の解消で賠償責任が認められる場合とは?

婚約の法律上の意味とは?

  結婚をする前に婚約という状態が生じる場合があります。法律上はあくまでも,結婚をすることを約束する「予約」という状態を指すものです。売買などの契約ごとと同じく「予約」と都耐えられるものではありますが,予約を守るよう相手が意向を示した場合にそこに縛られるという意味合いはありません。これは,あくまでも家族関係をつくるかどうかなどの話は本人の意向が尊重されるべきであると考えられるためです。

 契約ごとの場合には,「予約」と言えるだけの状況が存在する場合には,相手が本契約をすることを求める場合には,原則としてそれに応じる義務があります。婚約の場合には,応じる義務が原則としてないという点で特徴があります。もっとも,それでは婚約には何の意味もないのではないかという話にはなりますが,一定の場合に賠償責任を相手に負うことがあるという話にはなります。そのため,それなりの意味はあります。

 

 婚約解消になっとくがいかないから賠償請求をしたいその他何ができないか(これは,請求したいというケース・請求を受けるケース)という話があるように思いますが,後で述べるように相応にハードルが存在します。

解消することについて賠償責任が認められる場合とは?

 それでは,どんな場合に賠償責任が生じるのかという話が問題になります。抽象的に言えば正当な理由なく一方的に婚約を解消したと評価できる場合です。婚約後実際に結婚するかどうかはその方の自由意思が尊重されるということもあり,一般的に見て不当な理由と言える場合に賠償請求が認められる理由は限定されています。少なくとも,個人的に納得がいかないというだけで「正当な理由がない」とは言えない点は言えます。

 「正当な理由がない」場合としては,浮気をしてそのことが原因で婚約解消に至った・暴力や暴言がひどい・経済的な破綻が存在する・相手への信頼関係を破壊するといえるだけの行為が代表例として挙げられます。暴力や暴言は内容や程度の問題(そもそも暴言等にあたるといえるのか)があります。信頼関係破綻行為も実際に会ったことへの評価が入りますので,思ったことがそのまま当てはまるわけではありません。

 したがって,相手の裏切りと考えて納得がいかない事の全てが賠償請求(金額面は別の話です)へとつながるわけではなく,特に意向が平行線の場合に裁判に至って請求が認められるとは限らないという点には注意が必要でしょう。

 

 実際のケースの一つとして比較定期最近の裁判例(東京地裁令和3年6月7日判決LEXDB25601173)を取り上げておきます。事実関係についてお互いの言い分に食い違いがありますが,判決での認定をベースに記載します。このケースは概略,職場の同僚が交際⇒同棲⇒結婚式を挙げる⇒別れる,という経過の後に女性側が男性側に損害賠償請求をしたものです。結論から言えば,賠償の原因として主張された事柄ごとに賠償請求の根拠となる違法性のある行為かどうかを検討し,該当しないと判断しています。

 ここで主張されたのは,①前の交際相手の画像などを残していた行為②婚約後独身とふるまった行為③堕胎を求める・その他配慮に欠ける言動の存在④自宅からの追い出し行為等,です。①は浮気行為が存在すれば違法性を帯びる可能性がありますが,このケースではそうしたことはなく,結局が増殖居がなされていることが考慮されています。②は違法性がある行為ではない・③も具体的なこのケースでの言動が違法性が認められるほどの行為ではないと判断しています。④は具体的な事実経過の認定から追い出しとまでは言えないとしています。

 

 あくまでも具体的なケースでの事実関係がどうであったのかが問題になりますので,上記の裁判例のケースでもそこで出てきた事項からすると違法とは言えないとされている(一般論が述べられているわけではない)点に注意が必要です。例えば,堕胎などの存在もそこに至る言動いかんでは違法性ありと評価される可能性もありえます。

 別れる際のトラブルということで問題になることもありえますが,対応には注意をする必要があるでしょう。

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