よくある相談

一方の親が夫婦の為に形成してくれた財産が特有財産や寄与以外で考慮されるケースはあるのでしょうか?

特有財産や寄与で考慮されるケース

  他のコラムでも触れていますが,夫婦どちらかの親が家の購入資金その他の援助をしたことが財産分与の対象になるのかなどで問題になることがあります。夫婦一方に対するものであれば,特有財産として財産分与の対象外になります。一方に対する援助なのか夫婦に対する贈与なのか事実関係が争いになることもあり,特有財産というのであればその主張をする側がその根拠を示す必要があります。預金での名義借りの場合にも元のお金がどこから来たのかなどをはっきりする必要が出てくることもあります。

 自宅購入資金であれば,自宅の評価額が変動することや一部のみ援助その他はローンを組むこともあって,貢献した割合がどの程度なのかが問題になることがあります。自宅自体を特有財産部分とそれ以外に分けることはできず貢献の割合(財産分与の対象となる部分として一部の取り分を考慮する)で考えるという話です。筆者の知る限り相当に多くのケースでこうした形で財産分与の際に問題となるように思われます。名義借り財産の場合ももちろん夫婦の共有財産にはなりません。

 同様のことは,夫婦の双方の名義で夫婦の一方の親が預金その他をしてくれた場合でも問題となりえます。そうではなく,財産分与の裁判所の判断での裁量事項(その他一切の事項)として考慮すると述べた裁判例が比較的最近(東京高裁令和3年12月24日決定・家庭の法と裁判40号71頁)あります。以下,その内容を紹介します。

比較的最近の裁判例で裁判所の裁量事項として判断されたケース

 財産分与では夫婦が築いた財産の清算がメインの要素(実際には慰謝料的な要素や扶養的な要素もあると考えられてはいます)と思われますが,法律上は「その他一切の事情を考慮」することが認められています。特に裁判官が判断する審判(調停で話がつかなかった場合)に諸事情を夫婦双方の公平を図るために考慮できるとされているものです。

 先ほど触れた裁判例のケースでは,決定文によれば,夫側の親が夫の名義での預貯金などの他に妻側の名義での預金などを援助していたという事情も問題になったものです。離婚後の財産分与の調停で話がつかず審判に移行したものになります。このケースでは,妻名義の財産は夫親の財産(名義借りをしただけ)という言い分もされており,贈与の有無や夫婦の生活の支援のための贈与(一方だけへの贈与ではなく特有財産と言えないのかどうか・夫婦の生活のための支援となると共有財産として分与の対象となりえます)等の点が争点となっています。

 1審で問題となっている財産を夫婦共有財産と認定したうえで財産分与が命じられているのに対し,同じ争点について,やや異なる判断を示しています。その判断は財産分与の対象になるとしつつも,夫親からの援助部分が相当程度含まれていて,夫婦が自ら築いたものとはいいがたい点があることから,公平の観点から「一切の事情として考慮」するとしています。実際には個別財産ごとに財産分与の対象となるのかどうかなどを判断し,前記の調整を加えた判断をしています。

 この方式で妥当な解決を図るように調整をするというものと理解できますが,1/2ルールその他の分かりやすい基準がないという点には難点があり,予測が立てにくい面はあります。この裁判例が掲載されている掲載雑誌の別の号である家庭の法と裁判第10号で審理方式の提言がなされています。分与の基準時点や対象財産・貢献度などに争いがある場合の審理・解決方式として提案されているバランス方式という方式がその一つでその方式に沿うものではないかという趣旨の解説が掲載雑誌のコメント欄にはなされています。今後実際の進行でこうした審理がなされるのかどうかは分かりません。「一切の事由」という抽象的な話での予測がつきにくいのではないかという問題や理由が丁寧でないと納得感がないという話が出てきかねません。もちろん,このケースでの説明で分かりやすいのかどうか等の点は議論とはなりうると思われます。

 

 いずれにしても,一切の事情としての何かしらの考慮がされることはありうることを示すものとは言えます。また,このケースでは実際の稼働の有無が争いになっている役員報酬を基にした預金があります。本筋とは離れますが,こうしたお金は名義財産か援助としてのお金なのかが争いになりかねないうえに税務上も問題を引き起こしかねませんので,実際にどうするかは考えておいた方がいいように思います。

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