よくある相談

会社からの貸付がある場合、財産分与で考慮してもらえますか?

婚姻生活のために負担した債務は財産分与での考慮対象になりうる

 財産分与は,共同生活をしている夫婦が結婚中に形成した財産を離婚時に清算するという考えによるのが一般です。この考え方によると、夫婦が協力して形成した資産だけでなく、負債(借り入れ)があるときは、それも考慮した上で考えていくことになります。

 この考え方でいくと、よくある結婚後購入した自宅の住宅ローンや自動車のローン、あるいは生活費が不足していたことから借り入れをしていた場合の負債、奨学金などの教育ローンなどは夫婦が共同生活をしていくにあたって必要な借り入れといえます。ですから、プラスの住宅や自動車の価値だけでなく、これらの借り入れの別居時点の残高も含めて分与対象財産の評価を考えていくことになります。

 他方で、一方が競馬やパチンコなどにのめり込んでいたために借り入れをしたときや、生活に必要なものと言えない高額な宝石や衣服などを購入するために借り入れをしていたときは、それらの借り入れ額を財産分与の対象にあたるとは考えません。これらについてはあくまでも借り入れをした個人の負債として考えていくことになります。ただ、実際のところは純粋にそういったものだけにあてられたといえず、生活に必要なものの購入や外食なども混じっているケースもあるので、区別が難しく、争いになることもあるでしょう。

事業についての借り入れは財産分与の考慮対象にならない

 これに対して、会社の代表者である夫(ないし妻)が会社から貸付を受けているということがあります。貸付がどういったものの使途のためかによりますが、一般的には事業に充てるための借り入れと思われます。こういった場合には、夫婦の共同生活を間接的には(会社経営の状況を通じて)維持するためであるとしても、直接的に維持するためであるとはいえないことから、分与対象財産としては考慮されないことになります。

 ただ、実際のところは夫婦の一方ないしは双方が個人事業主で、それぞれ借り入れがあるという場合、事業に充てるためのものとそうでないもの(先の生活費や教育費などに充てるため)が混じっているケースもあるでしょうから、そのときは両者をどう区別するか(できるか)という問題があります。

債務だけを取り出して分与対象と考えられますか?

  事業に関する借り入れがどうかに限りませんが、特にローンが資産といえるものを上回るとき、そのローン自体を取り出して半分を他方に持ってもらいたいと主張することができるのでしょうか。

 特に住宅ローンが住宅自体の価値を上回るときで、他に資産といえるものが乏しい場合などにそういった主張をすることがあります。

 しかし、財産分与請求は別居時にプラスの財産があることを前提に、一方が他方にプラス部分の半分を渡すようにいうことを認めるものであって、マイナスしかないものについて分ける(負担させる)ことを求めるものではないとされています。こういった場合は結局のところ分与すべきものはない(ゼロである)という扱いになります。

 もっとも、夫婦が離婚する際に自主的にマイナス部分を分け合うことについて合意することは可能ですが、調停や裁判官が判断する審判手続きにおいては、上記のような取り扱いになることはおさえておく必要があります。

 

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