別居後に荷物の持ち出しや引っ越しをする場合に注意すべきことは?
別居後に持って帰りたい場合があるとき相手方(居住者)の同意なく取りに入ることができる?
自宅に帰ると突然妻に荷物が持ち去られてしまい、生活必需品である冷蔵庫や電子レンジ、洗濯機なども無くなっていて困ったという話は割と聞きます。
逆に夫の方が自宅を出たものの、季節が代わり持ってこなかった衣類が必要になったり、持って出るのを忘れていたものに気づいたりということもあります。
このようなとき、夫が自宅のカギを持って出たままであるとき、妻や子供が留守の間にこれらのものを取りに自宅に入ることができるでしょうか。
これもよくあるのですが、夫が自宅を出たあとにカギを替えられているということがあります。このようなときにそれでも入ろうと合鍵屋を同行して合鍵を作製して自宅に入ると、現在の居住者である妻の了承なくして侵入しているということになりますから、住居侵入罪に該当することになります。また、カギが取り換えられておらず、自宅に入ることが出来たときでも、既にいったん別居ということで自宅を出てしまっている以上、妻の了承なく勝手に入るとやはり住居侵入罪にあたる可能性が出てきます。
いずれにしてものちのちのトラブルのもとになりますので、妻の了承なく自宅に立ち入らないようにした方が良いといえます。
持って行きたい荷物があるときにどうすればいい?
そうすると、自宅を出た夫は持って行きたい荷物があっても取りにもいけないということになりますが、このような場合にはどうすればよいのでしょうか。
すでにある程度荷物を持って出ており、追加で必要なものがあるときは、妻ないし妻に代理人弁護士がいる場合はその弁護士を通して必要なものを依頼して受け渡しをするというのが一般です。荷物の受取については妻が顔を合わせたくないというときはどのような方法にするか、調整が必要になってきます。また郵送の場合には郵送料を誰が負担するかも決めておいた方がのちに紛争にならずにすみます。
まだ荷物がかなり置いたままになっているというときは夫側から荷物リストを提出して、持ち出すものを調整することもあります。明らかに夫が結婚前に持ってきたもの、あるいは結婚後に購入したものでも夫の衣服や靴など、夫が主に使っていたものについて持ち出すことに争いが出てくることはあまりないと思います。しかし、結婚後に購入して一緒に使っていたもの(テーブルや椅子、テレビやパソコンなど割と値の張る家電製品など)については、共有財産にあたるものであるということもあり、どちらが使うかでもめることもあります。このあたりは話し合いで決めていくことになります。購入時の価格で調整したり、仕事で必要であればそちらを優先するなど、ケースバイケースで取り決めることになります。
相手方が了承なく持って行ったものを財産分与で評価してもらえますか?
先の別居の際に一方的に相手方が持って出てしまったり、別居後でも話し合いがつかないうちに持って行かれるということがあります。このようなときには共有財産にあたるものであるときは、財産分与で評価されるのでしょうか?
結論としては実際のところ難しいというのが現状でしょう。というのも、不動産や自動車など市場で価格があるものとして取引されているものと異なり、家電製品は一度使うと価値が下がる(なくなる)と考えられるものも多いため、基本的には価格に引き直して財産分与で検討するということは実務上行っていません。ただ、家電製品でもものによっては(例えば購入して間がないなど)価値を考えられるようなものもありえます。またリサイクル品として流通している場合もありますから、価格に引き直して考えられることの裏付け資料が出せるのであれば、財産分与で考慮することも全くないとまではいえないでしょう。このあたりにちいては特に調停になっているときは話し合いで決めていくことになると考えられます。