よくある相談

子の引き渡しを命じられた後の実行手段と引き渡しができない場合の間接強制とは?

子の引き渡しや監護権の判断とその後の実行方法とは?

  夫婦どちらかが子どもを連れて家を出た場合などに監護者の指定や引き渡しに関する家庭裁判所での手続きが行われることがあります。その際に,話し合いがつかない場合には裁判所が,これまでの監護状況や現状・子どもの意思や年齢などを踏まえて,子どもの利益に沿った判断を出すと法令で定められています。

 そこで出された判断には監護者として夫婦どちらかを指定する(あくまで離婚までの暫定的な監護者)・引き渡しを命じる場合にはその判断も出されることになります。引き渡しになった場合に自発的に引き渡される場合(それでも子供が泣きじゃくるなどの問題が出ることは十分ありえます)には,その後実行のための方法が問題になることはありません。そうならない場合には,直接の引き渡しを求める手続き・人身保護法という法律に基づく請求・引き渡さないことへのペナルティをお金の支払いで確保する手続きが存在します。

 このうち,直接の引き渡しを求める手続きと言っても無理やり連れて行くわけではなく,強制執行を行う機関の方からの引き渡しを命じられた側への説得や子供が嫌がる場合にはそこへの説得をするという形になります。説得がうまくいかない場合や子どもの拒絶意思が特に強い場合には,この手続きでうまくいかないということで他の方法を考えることになります。

 人身保護法に基づく手続きは監護権がない方の場合には原則違法な拘束ということで認められる裁判所での手続きになります。ここでの手続きでは強制の度合いが強くなりますが,子どもが真に嫌がっているケースではそうした拘束ではないと判断されることも稀にありえます。ただし,基本的にはここでの引き渡しになるものと思われます。

 

 このほかに,お金の支払いを求める手続きでは引き渡しがうまくいかないうちに時間が経過すれば,それだけ大きなお金の支払義務を負う可能性があるという意味で,負担が大きくなる可能性があります。

 

子どもが嫌がって引き渡しがうまくいかない場合の問題点

 既に先に触れていますが,裁判所でのより強制の度合いが強い手続への移行やお金の支払いを求める手続きが認められれば,時間の経過とともに大きなお金の負担を負う可能性があるという点があります。裁判所での判断が確定(争えない段階)している以上は原則お金の支払いを命じる判断を止めるのは難しいことになります。

 この判断が認められない,権利の濫用であるというかなり特殊なケースでの判断(最高裁平成31年4月26日決定・判例タイムス1461号23頁)が存在します。そのうえで,比較的最近権利の濫用とは認めなかったケース(最高裁令和4年11月30日決定)もあります。両者とも,引き渡しを命じられた子供のうち一部の方が引き渡しに強く抵抗をしたという点では似た背景がありますが,判断は逆となっています。そのヒントとなる話は後者の判例の補足意見で記載されています。

 背景で異なる点は,前者は①直接の引き渡しを求める手続き⇒②人身保護請求⇒③お金の支払いを求める手続き,後者は①直接の引き渡しを求める手続き⇒②ご本人らのやり取りがうまくいかず⇒③お金の支払いを求める手続き,という点です。②の点が大きなポイントではないとではないかという話が決定では触れられています。

 基本的には判断が定まった以上は引き渡すのが原則で,そのための方法が封じられるのはかなり限定されるという点は同じであるとされています。子どもが嫌がっているという点もそれだけでは例外にはならないという話が触れられています。比較的最近の判断では,その子供が2か月のうちに2度拒否的な対応を見せたというだけでは足りないとされています。そうなると,子どもの説得などではうまくいかない場合に,そのまま調整を図ろうとしても進まない側には金銭支払義務が出てくる点は大きな問題となりえます。

 こういったときには事情変更があるとして監護者の変更の申し立てをするかどうか(他にお金の支払いを求める手続きの排除を求める裁判を起こすなど)という問題が出てきますが,近い時期に判断が出ている部分について事情の変更と言えるだけのものであるのかなどの吟味が必要になることもありえるでしょう。

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