よくある相談

財産分与請求されるはずの金額が費消されたとして返還を求めることはできますか?

財産分与は話し合いや審判などで決まる前に具体的な金額について請求できるのでしょうか?

     離婚の話になったときに、既に財産分与の対象になるはずの現金や預金残高が減少していたりすることは結構あります。

 この場合、本来財産分与の対象であるはずのものが費消されたなどとして、本来取得できた金額(通常半分相当)について返還を求めることはできるのでしょうか。

 上記について判断した裁判例として、比較的最近の裁判例である東京地方裁判所令和元年10月9日判決があります。これは事案の概要をみると、わずか1か月程度の同居後、別居に至った夫婦のうち、夫が結婚祝いや出産祝いとして贈与を受けた祝い金を管理してた妻に対して2分の1を超える金額を返還するよう求めたというものです。

 そもそも祝い金が財産分与の対象にあたるのかどうかも厳密には問題になります(親族からの贈与であって、夫婦が共同して築き上げた財産ではないため)が、裁判例では全額について夫婦共有財産であると判断しています。これは祝い金の性質(夫婦双方に対しての贈与とみたと思われます)や受け取った時期の近接性(結婚式や出産時期に近い時期にもらったもののようです)、夫婦で共有財産とする合意があったといえることなどからそのように判断されているようです。

 その上で、裁判所は財産分与請求が夫婦の協議・審判などで具体的な内容が形成されるまでは相手方に主張することができる具体的な権利でないと判断した過去の最高裁判所の判決から、このケースでも同様の考えを取っています。また、結婚期間中夫婦の間で共有財産であること・その管理が決められたものについては、管理をするものを替えたり、分割を求めるには夫婦の間で協議するしかないとしています。

 そして、この事案のように夫婦共有財産の一部・全部を夫婦の一方が管理する場合、管理者は他方から分割請求・返還請求をされても請求にただちに応じる義務はないとしています。

 

費消された場合の使途によっても影響がありうる

 また、この裁判例では、共有財産の使途は夫婦共同生活にかかる生活費などに充てるのが主たる内容といえるから、管理をしている者が使途で合意していたものや生活費にあてていれば返還する必要がないとの判断をしています。実際にこのケースでは祝い金の一部を返礼品の購入代金に充てる合意があったといえること、また残額は生活費に使ったようですが、夫が妻に対して生活費を十分に支払っていなかったという事情もあるようです。

 そのため、このケースでは結局のところ妻が費消した金額分を財産分与の先取りといった形で考慮はしていないと思われますが、妻が費消した使途によっては、例えば分与対象財産として評価可能なものが残っているとき、その評価分の2分の1相当を財産分与の協議等の際に分与するなり、代償金の支払いをしなければならないこともあるでしょう。

 いずれにしてもやや特殊な事案についての裁判例ではありますが、財産分与請求は協議などがされていない段階では具体的な請求ができず、返還を求めることは難しいことから、実際のところは財産分与の具体的な手続きの中で問題にしていくべきものといえます。

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