よくある相談

一度取り決めた養育費の減額を求める場合の差押え(強制執行)のリスクとその対応方法は?

減額の合意や裁判所の判断が出るまでは支払い義務が続きます

 養育費は取り決め時の事情変更があった場合には,変更を求められる(ただし,一般に取り決め時に予測できた事情は無理)と考えられています。事情変更が話し合いで決着がつくのであればその時点・裁判所の手続き(特に判断がされる場合)には判断の時点で変更がされることになります。変更が判断や話し合いで決着した時点からなされることもあれば,遡ってなされることもありますが,あくまでも変更自体は変更がなされる時点に決まります。

 わかりにくいですが,遡る場合があるとしても,裁判官の判断が出された時点等まではわかりません。言い換えれば,その時点までは一応の支払い義務が続く形になります。養育費の支払いを怠った場合には,相手から支払いを求められる・最悪は給与などの差押えがなされることもあります。この差押えは取り決めが調停である場合のほか公正証書が作成された場合もなされる可能性があります。

 減額となるべき事情が生じた時点までさかのぼるかどうかは,あくまで個別の事情によるため明らかではありません。ただし,遡ったにもかかわらず,差押えをした場合には取りすぎの部分をどうするかという問題は出てきます。ただ,遡るかどうかが問題になる場合は話し合いがなかなか決着しない可能性もあり,遡るか(そもそも減額となるかを含めて)の可能性をよく考えておく必要はあるでしょう。

減額調停などの申し立てとともに対応する方法には何が考えられるでしょうか?

 差押えへの対応は実際に差押えがなされた場合に,裁判所に対して,事情変更が生じていることを根拠に裁判を起こすとともに差押えの停止(強制執行の停止)を申し立てる方法があります。この裁判は請求意義の裁判と呼ばれるもので,事情変更が生じたことを言い分とともに立証する必要があります。裁判所が認めれば差押えの対応にはなります。

 

 ただし,この裁判によっても養育費の支払い義務が変更されるわけではないので,差押えがある場面ではお互いだけの話し合いは難しいことが多いでしょうから,家庭裁判所への調停などの申し立てをすることになるものと思われます。この方法以外にあらかじめ変更の調停や審判とともに申し立てができるかという問題があります。その方法として家庭裁判所に差押え停止を求める審判前の保全処分というものを申し立てるものが法律上定められています。

 この方法は家庭裁判所に変更の蓋然性があること・緊急に差押えを停止することを求める必要性があることを示す必要があります。この方法を使った申し立てについて最近の裁判例(東京高裁令和3年5月26日決定・1審とともに家庭の法と裁判43号・82頁以下に記載あり)では,1審が最初に挙げた裁判などを起こす方法(他の方法がある)があるから等の理由で,この方法を認めないという趣旨と読める判断をしています。2審ではこの判断を覆しています。ただ,減額の場合にはどこまで減額を認められるだけの事情があるのかを証拠も含めて示す必要があります。また,緊急の必要性があるという事情も具体的に示す必要があります。これらは申し立てる側に示す責任がありますので,この方法自体があるからハードルが当然に低いわけではないように考えられます。

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