よくある相談

結婚して間もなく生まれた子どもの血縁上の親が問題になった場合に,法律上の扱いや扶養義務はどうなるのでしょうか?

令和4年民法改正前後での変更(嫡出推定の制度)

 別のコラムでも取り上げていますが,令和4年12月に民法が改正されました。その中にはこの記事記載の時点(令和5年5月)では未施行なものの,女性の離婚後の再婚禁止期間の制度の廃止や「嫡出推定」の制度の改正が含まれています。

 

 「嫡出推定」の制度とは,法律上の結婚での子どもといえるのかを推定した制度(これを破る制度として「嫡出否認の裁判」があります)です。推定される場合には,法律上親子関係があることになるので,破るための制度を活用しない場合には原則法律上の親子関係は存在し,扶養義務はある扱いになります。ということは,仮に実際は血縁がなかった場合でも何もしない場合には養育費などの生活費の負担はその子に対して出てくる形となります。

 

 この「嫡出推定」の制度も一部改正により変更はあります。主には破るための制度の制限を緩和するものですが,結婚してから200日経過してから生まれた子ども・離婚をした場合には300日経過までに生まれた子どもは結婚した夫婦(特に夫)の子どもと推定すると規定されています。この点は大枠は改正の前後で変更されていません。この推定の意味は破るための制度の違いもありますが,推定を受けない場合には法律上の親子関係は確定していないという点で大きな違いがあります。

 関係ありませんが,いわゆる「無戸籍」問題との兼ね合いでは,離婚してすぐ再婚をし(改正法施行により可能になります)た場合には,離婚後300日以内であっても再婚後の夫のこ子どもと「推定」される制度に変更されます。ただし,再婚しない場合にはこれまでの取り扱いと変わりはありません。

血縁上の親でない場合の扶養義務は?

 「嫡出推定」を受けない場合には,扶養義務があるのかどうかが問題になった場合には,実際に親子関係があるといえるのかをはっきりさせる必要があります。言い換えると,当然に法律上の親子関係がある⇒扶養義務あり⇒生活費の負担義務ありとはならないということが言えます。「嫡出推定」を受ける場合には,これを破る制度によって,親子関係が否定されることがない限りは法律上の親子関係・扶養義務は存在する扱いになります。

 

 そうなると,結婚してすぐに子どもが生まれた場合には,先ほどの「推定」を受けないことになります。実際にはない方がいいのでしょうけれども,その後血縁上の親子関係があるのかが問題になった場合には,離婚の問題だけでなく生活費の負担義務(法律上の親子関係の存在が前提)の有無も問題となってきます。

 最近だされた,最高裁の判断(最高裁令和5年5月19日決定)では,こうした点が問題になったケースで,2審の判断方法に問題があったかどうかという点で判断が出ています。このケースでは,今回まさしく取り上げた点が問題となっています。別居後に妻側が生活費の負担を求めて家庭裁判所の調停⇒審判と至ったケース(決定文では親子関係がにことの確認の調停や裁判もされいたようです)です。

 このケースでは,DNA鑑定が実施されており,そこでは否定方向の結論が出ていたとjころで,生活費の負担義務(特に子供に対して)があるかどうかが問題になっています。結論から言えば,否定する判断が出ています。2審で法律上の親子関係があるかどうかは別途裁判で解決するものの,そこで最終的な判断が出るまでは扶養義務を子どもに対して父側は追うということでの判断をしています。最高裁は,扶養義務があるかどうかの先決の話として親子関係の有無の判断を行うことができるのに,それをせずに扶養義務ありとする判断はおかしいと述べています。2審の判断方法を退けていますが,このケースでは別に親子関係がないことを確定させる判断が先行して出ており,そこを踏まえて扶養義務を否定(生活費の請求を退ける)する判断をしています(妻自身は権利濫用だから認めないという点では2審も同じです)。

 DNA鑑定のみで法律上の親子関係の有無が決するわけでは必ずしもありませんが,「嫡出推定」が及ばない場合には,こうしたことも問題となりえます。

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