よくある相談

同居に応じないことが婚姻費用(生活費)を逃れる事由になることはあるのでしょうか?

基本的には別居時こそ負担義務を負うものです

  突然妻側が家を出て行った場合に,生活費の支払いを求められることはままあると思われます。法律上夫婦は協力し・同居をする義務があり,別居はこれらに応じないことではないか・それなのになぜ支払われなければいけないのかという疑問が出てくるかもしれません。しかし,裁判所等では一般に,夫婦は結婚している限りは原則として扶助・生活費の負担を負う義務を負うとされています。同居をしている場合には家計が同一なので,ここが問題になることは基本はないものと思われますが,別居している場合こそこの義務が問題になると考えるわけです。

 

 それでは一方的に自分だけが義務を負うのかというお考えが出てくるかもしれません。ただ,一方が果たさないから自らの義務が逃れられるという性質のものとは考えられていません。例外もよく言われる話として,不貞行為を行ったなどの事情があるケースで支払義務が軽くなる(なくなる,ただし,子どもの養育負担分はそのまま)ということがあるだけです。

 

 感情的になるだけではなく,家庭裁判所に別居後時間をおかず調停を申し立てられている場合には,この点を頭に置いて対応をする必要が出てきます。

一度も同居をしたことがないケースでは?

 ほぼ結婚の実態がないケースや必ずしもイコールではない同居をほとんどか全くしていない場合には同じように考えられるのかという問題があります。結婚に伴う義務の前提となる結婚自体には同居など結婚しての生活を営む意思が届け出の実態に必要とされています。

 ただ,同居したことも少しはある・週末一緒に生活をする場合には実態がないとは言えないこともままありえます。週末に会って一緒に過ごしてはいたものの同居はしていない夫婦のケースで生活費の負担義務を負うのかが問題となった比較的最近の裁判例の判断(東京高裁令和4年10月13日決定・家庭の法と裁判45号47頁以下)があります。

 

 このケースでは,前記の関係で妻からの生活費の請求を1審が否定したのに対し,2審で支払いを認めたというものです。支払いを否定した根拠は,簡単にまとめれば同居した共同生活のもとで家事や育児を分担しつつ,その分担による制約の分配偶者の収入から扶助を受けるという関係が成立する⇒同居しての共同生活がないと扶養を受けるという関係が成立しないから,というものです。これに対し,支払いを肯定する根拠は法律上結婚すれば同居と扶養の義務が出てくるというものです。実際に同居をしていてもしていなくも,義務が発生する⇒支払義務は出てくる点は同じという話になります。

 

 別居の後の支払義務を肯定する考え方からすると,2審の判断が出てくることは十分予測できます。考え方の是非はここでは触れませんが,同居等婚姻生活がなされているとはいいがたい(全くの別生活でやり取りもほぼない)ケースはともかく,週末婚の場合でもそう簡単には生活費(婚姻費用)の負担義務がなくならない可能性がある点にも注意が必要です。

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