よくある相談

精神疾患になって退職したという事情は,婚姻費用や養育費の減額事由になるのでしょうか?

退職の理由や経緯がなんであるのかによって異なります

 一度決まった養育費や婚姻費用は,事情の変更があれば減額(増額)がなされうるとされています。今回は減額の根拠になりうる事情として,精神的な病気による退職が問題になるのかを触れていきます。一概に精神的な病気や退職といっても,当然に減額事情になるわけではありません。その状況や退職の経緯が問題になりえます。例えば,自己都合退職であるとか・減額の申し出をする直前になって突然病気になったという場合には,減額事情とは言えないとされる可能性が出てきます。

 これは,自己都合退職の場合には退職を余儀なくされたとは言えない場合もあるためで,退職をしても稼働能力がある(退職前と同じ収入を得られるはず)として,減額事情にならないと考えられることがあるためです。減額狙いでの収入減少がありえますので,こうした疑いや考慮がされるか猛省があります。精神t根期な病気の内容・重篤さや治療経緯によっては,突然重い症状に見舞われて自己都合退職に至らざるを得ないこともあるので,申し出直前に病気になった・自己都合退職だからといって,直ちに減額事情にはならないというわけではありません。

 

 治療経緯や症状が不明である・就労が一時できない場合(休業のケース)で実際の状況がわからないという場合には,稼働能力が本当にないのか疑問が出てくる可能性があります。

診断書などの記載内容の影響はありうるのでしょうか?

 それでは,診断書に「就労不能」と書いてあれば,病気の名称等によっては就労が困難(収入がない)と考えられる可能性があります。ただし,診断書にこの記載があっても必ずしも「稼働能力」がないと考えられるわけではないという点には注意が必要です。裁判例の中でも,大阪高裁令和2年2月20日決定・判例タイムス1484号130頁では,婚姻費用の減額変更での変更事由が存在しないとして1審の判断を一部変更して減額請求自体を退けたものがあります。このケースでは,抑うつ状態での通院を続け・診断書に就労不能という記載があるものの(休業加療の必要あり),自己都合での退職である点・退職後の行動から見て就労不能かどうかに大きな疑問があると判断されたものです。

 決定文からは,このケースでは通院のペースやどのような具体的症状なのか・就労制限はどのようなものかの記載が診断書からうかがわれないこと,退職後の療養が必要なはずなのにそれと整合しない行動があることが重視されているようです。減額狙いということがうかがわれる事情がある場合には厳しい判断になる可能性もありえます。

 

 ここからは,診断書やカルテの記載も重要ですし経緯や退職後の言動なども大きな考慮要因となる可能性があります。もちろん,少し間隔があいても通院が継続し症状も具体的である場合・大きく療養生活と矛盾する話がないならば,今紹介した裁判例のような判断にはなりにくいものと思われます。

 いずれにしても,記載内容や経緯・日常言動は影響を与える可能性があります。また,長期の療養の場合には健康保険からの傷病手当金の支給(収入になります)もありうるので,当然に収入ゼロになるのかが問題になる場合もありえます。

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