給与や事業売り上げなどの減収可能性は婚姻費用や養育費でどこまで考慮されるでしょうか?
そのハードルは相当程度あります
残業の減少や手当がなくなったか減った・事業環境の悪化があった場合には減収が見込まれる(予測される)ことがあろうかと思われます。ただ,特に家庭裁判所の調停などの手続きでは前年の収入(源泉徴収票や確定申告書等)に基づき,婚姻費用や養育費の算定基礎収入を考えるのが通常です。支払いはこれからなのに,収入は過去ということになるとアンバランスが生じるのではないかというのがここでの問題です。
では,減収の可能性や見込みが出ることで減ることが考慮されるかというと,ここには相当なハードルが存在します。過去の数字は確実なものとして存在するため継続する蓋然性が相当程度ある一方,実際に収入がどうなるかはあくまでも予測であるために,蓋然性が相当低いと考えられるためです。もちろん,手当てが減るのだから減収になる可能性は一定程度あるのですが,例えば残業の状況その他ボーナスなどがどうかという問題はあります。事業環境の関係で言えば,経営者の視点では相当程度減少が見込まれるのになぜというところはありうるところですが,少なくとも裁判所での手続きではその視点通りにはいかない傾向にあるものと思われます。
いずれにしても,減収の見込みという話だけでなんとかなるものではなく,相当な資料等がないとかなりのハードルがありうることは頭に入れておく必要があります。これに対して,そもそもインセンティブ報酬部分が大きい等収入自体が毎年変動している場合には,過去3年から5年程度の収入の資料から考えていくことになります。
また,そもそも婚姻費用や養育費の月額に大きな違いを与えるにはその計算上の理由(簡単には標準算定表を見ればわかるところもあります)から,かなり変わらないと影響は出ないところにあるように思われます。
必要な資料とは?
それでは,減収が考慮される場合とはいかなる場合でしょうか?先ほど触れた点もありますが,根拠が具体的に存在すること・その減収が大きなものであることが必要です。このうち,どこまで具体的な根拠が必要なのかという点ですが,既に前の決算から時間が相当程度経過している場合には個人事業者の場合には数か月の試算表(前年との比較は必要です)・給与の方の場合には手当などの減少が生じた後の給与明細などが少なくとも必要でしょう。
特に給与明細はこれだけでもって当然に減収が見込まれるわけではありませんが,少なくともその主張の状況が明確に裏付けられていないと,そもそも単に可能性を言っているだけと捉えられる可能性があります。見通しが微妙な場合には,実際に判断(婚姻費用の場合には審判)になった場合の見通しも踏まえて対応を決めたほうがいい場合もあります。
試算表などの場合も結局はこれまでの確定申告書等の変動の中で説明できる場合(要は平均値で考えることができる程度の変動であること)も相当程度ありえます。要はこの平均を下回るほどの言動である必要がありますが,その場合には事業関係も踏まえて対応の必要が出ることもありえます。
実際にどこまで裏付けがとることができるのかの確認や見通しがどうであるのか・それを踏まえての方針をきちんと決めておく必要があります。