年金分割の意味とは?
将来もらえる年金が半分になるということではありません
離婚調停や裁判の際に,「年金分割」を求められることがあります。「按分割合を0.5と定める」ことを求められるので,招来もらえる年金が半額になってしまうという印象が出てくるかもしれません。しかし,この制度はそういうものとは異なります。この制度は大まかに言えば,結婚している期間における厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与月額)を1/2ずつ(按分割合が0.5の場合)に分ける制度です。
厚生年金記録は共済年金についても同様ですが,国民年金(いわゆる基礎年金)をどうにかする制度ではなく,あくまでも結婚している期間で厚生年金記録がある場合に問題となる制度です。先ほど述べた話にもあるように,年金額を半分とする制度ではありません。何かしらのお金を相手に支払うという制度でもありません。あくまでも厚生年金記録における標準報酬月額などを多い方から少ない方に寄せるための制度です。夫側は比較的多くのケースで年金分割の請求を受ける側ですが,決着がついた後は基本的に何かしらの手続きをする必要はありません。受ける影響は厚生年金記録に基づき将来もらえる厚生年金部分が決まるので,将来もらうことができる金額自体には影響します。
結婚期間における厚生年金記録(報酬比例部分が問題となるので,結婚期間が長いほどに将来影響を受ける可能性があります。ただ,按分割合(分ける割合)は原則0.5(つまり半分)とされていて,この原則が修正されるケースはかなり少ないように思います。そのため,修正を求める(要は少ない割合にする)という場合にはかなり説得力のある根拠が必要になります。
ちなみに,民間の個人年金保険等は解約返戻金額が財産分与の対象となることがありますので,年金分割の話とは異なるものです。
実際の年金がどうなるかはどうやって知ることができるのでしょうか?
これは厚生年金の計算方法に従ってどうなっているかを確認していくことになります。詳しくは日本年金機構のHP等に計算の方法が記載されているので,ここで基本的には触れません。簡単に言えば,保険料の納付月数が多く,標準報酬月額などが多い方ほど,受給金額は増えます。納付月数は離婚時年金分割には関係ありませんので,後者の標準報酬月額等の額に影響が出てくる時期があります。
簡単に確認する方法として,年金事務所で年金分割をした場合の標準報酬月額等を基にした金額を試算してもらう方法がありえます。すでに年金の受給が近い年齢の方にとってはリアリティのある試算結果になるかもしれませんが,今後も稼働や標準報酬月額が変わる可能性のある年齢の方の場合には,当然その影響もかなり受けることになります。そのため,試算をしてもらってもあくまでもその時点での参考数値としての意味合いしか持たない点には注意が必要でしょう。
年金分割という話が出てきた場合には,こうした点を頭に入れておく必要があります。ただ,按分割合を低くするために争うのはハードルがかなり高い点も注意が必要です。