離婚後共同親権とは?実際に制度変更はいつされるのでしょうか?
現在まで議論されてきた離婚後共同親権とは?
他のコラムでも触れていますが,今まで離婚後は夫婦どちらかのみが親権者となり,離婚前に監護権が争いになる場合を含めてどちらかが指定されることとなってきました。制度導入の是非は様々議論されているところではありますが,令和6年1月末に法務省の審議会にて「家族法制の見直しに関する要綱案」というものがまとめられました。途中経過を含めて何度か報道されているところではありますが,令和6年にこの要綱案を踏まえた法改正の案が国会に提出されるとの話です。その後法案が国会に提出され,成立しました。
今回は,この要綱案について触れています。ちなみに,この要綱案での改正では,離婚後の親権のあり方や離婚前の監護権・親権の行使のあり方のほかに,子どもに対して親が負う義務などが明確化されています。また,養育費に関する事項(法令で養育費額を定める法定養育費の設定・回収のための優先的な権利を法律上与える)。審判手続きの最中に収入などの情報開示を当事者に義務付ける制度(養育費や婚姻費用を決める手続き,子の監護に関する事件)・回収手続きの際の情報開示制度に関して回収側の負担を減らす制度への変更等もあります。面会交流についても明確化され,子どもの利益になるときに実施するという規定や取り決めが父母の話し合いで着かない場合の家庭裁判所での手続きや変更の手続きが定められていますこのほかに,親以外の方の面会交流の制度の創設など面会交流に関する制度変更も含まれます。財産分与の判断を行う上での考慮事項や情報提供の義務を定める内容も追加されています。この内容に沿って,改正案が国会提出され,成立しています。
このうちの,離婚後の親権については,協議あるいは裁判所の判断で,夫婦の両方あるいは一方を親権者と定めるとされています。判断をする場合には,子どもの利益や父母と子ども,父母の関係性等を考慮するとされています。ただし,子どもへの害悪を父または母が与える・父母の相手方に心身へ影響を与える暴力などがある等の場合は一方のみを指定する(つまり,単独親権になる)と記載されています。
単独親権になる場合は児童虐待やDVのある場合を例示して,そのほかに子どもの利益に反する場合が上げらていますが,この具体的内容がどこまでを指すかは明らかではありません。要綱案での付帯決議では法改正後の家庭裁判所の審理の重要性やあり方その他公的支援の在り方への要望が記載されています。
必ず共同親権となるのでしょうか?
法案の提出と改正手続きにより,改正内容は明らかになりました。夫婦間の協議で解決しない場合の裁判の手続きでは,単独または共同親権となるとされているために,必ず共同親権とはならない可能性があります。このうち,単独親権に必ずなる場合として,児童虐待やDVの話等が挙げられていますが,どこまでのものであれば該当するのか・事実関係が問題になることはありえるため,ケースによっては単独親権になるケースかどうかが家庭裁判所の判断の中で時間がかかるケースも出てくるかもしれません。
そのほか改正法の内容では,子どもにとっての利益・父母と子の関係,父母との関係・その他一切の事情を考慮して裁判所は判断を行うとされています。どういった考慮要素がどのようにウエイト付けをされていくのかという問題があります。これらの考慮要素を踏まえて,家庭裁判所が単独親権【この場合はどちらかを含めて】とするか共同親権とするかを定めるとされています。ここからもわかるように,父母の対立がある場合に必ずしも共同親権となるというわけでもありません。
とりあえず共同親権で親権行使の在り方について協議ができるケースでは問題が長く続かずに済むというメリットはあります。
改正内容は面会交流に関する決め方や家庭裁判所の手続きでの進行に関する事項,養育費に関する回収のハードルを下げる面もありますので,単に親権や子どもに関わる機会が増えたという話にはとどまらない点には注意が必要です。
改正法の施行前の離婚がなされた場合には単独親権に当然になっています。改正法施行後にその前の離婚についても共同親権へと変更する道を制度上は開いていますが,離婚時の親権者の指定についても共同親権になるわけではないので,こちらについても当然②なるわけではない点には注意が必要でしょう。