名前を名乗らないままの法律相談は可能でしょうか?
基本的には難しいことが多いものと思われます
弁護士事務所(法律事務所)に問い合わせる際に,名前を名乗らずに気軽に相談をしたいというご要望があるかもしれません。実際に連絡をされるとして,それが可能かどうかは各弁護士事務所(法律事務所)のスタンスにはなります。ただ,弁護士に関する規制(弁護士法あるいは弁護士職務基本規程)が存在することもあって,そうした対応が可能ではない(少なくとも当事務所ではお名前を名乗らないままの法律相談には対応していません)ことが基本ではないかと思われます。
これは,利益相反に関する規制が存在するためです。ここではかなり大雑把に触れますが,弁護士はいわゆるトラブルになっている際にお話を伺い・アドバイスをする(場合によってはその後の対応もご依頼があれば行う)形になります。話の性質上,中立的なケースよりも一方の側についてご相談やその後の対応をすることになることがほとんどかと思われます。
それにもかかわらず,一方のご相談を伺い,その後対立する相手の側についてもご相談対応をすることになると,当然ながら利害が反する側それぞれに肩入れをすることで,信頼を失うという面があります。このため,こうした利益が相反するご相談には対応してはいけないという規制が設けられています。どこまで行けば,利益相反に関する規制に該当するのかという問題はありますが(弁護士職務基本規程やその解説には詳しく触れられていますけれども,後で簡単に触れます),少なくとも事実関係を伺って・対応のアドバイスを行うという段階になれば,該当はすることになります。
そして,実際にご相談対応をして利益相反に該当する(対立する側のお話を伺う)ことにならないようにするには,事前にお名前を相手方を含めて確認するしかありません。そのため,ご相談の前にお伺いすることが通常と思われますし,それゆえにお名前を伺わずに法律相談というのは基本は難しいのではないかと思います。
どこからが法律相談になるのでしょうか?
それでは,一般的な問題・ある問題点のみを聞くだけでは,先ほど述べた規制に該当しないのではないかという点が気になるところです。
先ほど触れた規制の関係では,少なくとも,具体的な案件(問題となっているトラブル)について,法律的な解釈や解決策を求められてそれに対応する場合などとされています。単に他の話が出た際の雑談などで簡単に触れた場合には該当しないという説明もあるようですが,少なくとも個別にお問い合わせをいただき,問題となっている事項について回答をさせていただく場合には,ここ該当する可能性が高くなることはあります。やや抽象的ですが,境目は具体的な場面で考えるしかありません。その意味で,お問い合わせをされる弁護士事務所(法律事務所)ごとにお尋ねになる事項によっては,対応や回答は難しいという話が出るかもしれません。結局あるトラブルがあってそこでの解決を考えてお問い合わせをいただくということからすると,基本は規制に引っ掛かることが多いのではないかと思われます。
そうしたこともあって,規制に該当するかはっきりしなくとも,お名前をいただかずにお問い合わせをいただいても,対応は難しいということはありえます(当事務所も恐縮ではありますが,そうした対応をさせていただいております)。もちろん,それならば対応をするという事務所もあるかもしれませんので,そこはご確認いただいてということにはなるでしょう。