婚姻費用の支払いを求める調停を放っておいた場合のリスクと対応とは?
婚姻費用の支払いを求める話は最終的には裁判所の判断になります
調停の申立てを受けた場合に,裁判とは異なり通常の郵便(特殊な書留ではありません)で来ることになります。そのため,下手をすれば気づかないまま申立てがされ手紙も裁判所から来ているということがありえます。ただ,他のコラムでも触れていますが,婚姻費用(生活費)の支払いを求める調停は話がつかない(平行線である場合以外に,出頭がない等そもそも話し合いができないときを含みます)場合には,裁判官が判断を下します。言い換えると,対応をしていない場合には,相手側(支払いを求めた側)の言い分と証拠に基づいて判断をされる可能性があります。
放っておくことでの最大の問題点は,判断を出されたうえで,その判断を基本的には争えなくなる⇒支払義務が金額とともに一方的に決まってしまうという話です。支払いもしないままでいると,財産開示の手続きや情報取得といった手続に至ることもありますが,勤め先が判明している場合にはいきなり給与の差押えを受ける可能性があります。一度差し押さえられると,その後支払いをしても,相手が差押命令の取り下げをしない限りは離婚までずっと差押えの効力が続く(その後の給与も差押えの対象となる)という点もまた問題となります。
仮に,不服申立てをできなくなった場合にはどうすればいいのでしょうか?
裁判官が判断した内容(審判の決定)については、特別送達といって、判断を受けた人の受取が確認できる方法で送られてきます。ただ、その場合でも中身を見ずに放置し、気が付いたら不服申し立ての期間が過ぎていた、ということがありえます(不服申し立ての期間は不利な判断をされた側が受け取った翌日から14日になります)。
また、判断を受けた人が手紙を受け取らず、裁判所にまた手紙が戻ってしまったときは職場への送付になるときと、自宅にもう一度手紙を送り、今度は受取が確認できるかに拘わらず、受け取ったとの扱い(付郵便送達)となります。この場合にやはり手紙の内容を確認せずに放置すると、期間経過で不服申し立てが出来なくなります。
不服申し立てが出来なくなったときは、実は裁判所の判断よりも収入が下がっていたなどといった事情があったとしても判断通りに支払わないといけなくなります。もちろん、事情が変わったといえることがある(転職などで収入が下がった、相手方が無職だったのが職について収入を得るようになったなど)ときには、婚姻費用の金額を変更してもらえることがありえます。ただ、この場合は裁判所の判断が出されるまでの事情であると、そのときに主張できたのにしていなかったということで、金額変更してもらえるかどうか、という問題がありえます。
そういった事情も特にないときは裁判所の判断通りに払う必要が出ますので、支払いを怠っていると先ほど述べたように給与の差し押さえなどのリスクがあります。
また、予想外に高い金額で婚姻費用を負担しないといけなくなったときには、離婚についてどうするか、特に条件面について詰めておく必要が出てきます。ある程度先払いのような形で婚姻費用の支払をするようにして離婚をするかどうか、といった点も考えた方がいいこともあります。