婚姻費用の支払いを求められていますが、退職後収入がありません。退職金や貯金は考慮されますか?
退職後収入がなくても再雇用後の収入や賃金センサスにより計算される可能性があります
定年退職をする前後から離婚の話が出て、どちらかが別居することで婚姻費用の支払い義務が生じることがあります。
定年退職をしたあとは同じ勤め先ないし違うところに再雇用で勤務することもありますが、働かずこれまでの預貯金あるいは退職金を取り崩して生活費に充てる場合があります。
このような場合、定期的な収入が現時点で発生しているわけではなく、とはいえ継続的に日々の生活費は発生するようになりますが、婚姻費用についてはどのように計算するようになるでしょうか。
再雇用についてある程度以上具体的な話が出ており、再雇用後の支払額が明らかであったとしても、結局自分の意思で再雇用を選択していない場合には、婚姻費用の支払い義務をあえて免れる目的で再雇用を選択しなかった、などいえる事情が具体的にあるなどでない限り、再雇用後の収入額に基づいて計算するということはないといえます。
他方で、定年退職をしたあと、特に身体的・精神的に支障がないにも関わらず働いていないことを加味できるかというと、このあたりは事案によるものの裁判所の判断は分かれるようです。身体的・精神的に支障がないのに自分の意思で働いていないことを重視する場合は、賃金センサスといった統計資料に基づき、年齢や年齢に基づく雇用形態を踏まえて収入額を推定し、そこから計算するということもありえます。
預貯金や退職金だけでも生活費としてかかりうる金額から計算されることも。
他方で、実際に働いてはいないことを重視すると、働いていることを前提に賃金センサスに基づき収入額を推定し、計算するのではなく、現時点での資産状況に基づき日々の生活費がいくらかかっているかを踏まえて収入額を推定し、そこから婚姻費用を計算する場合もあります。
この場合には日々の生活費について、支払いを求める側・支払う側との間で対立する可能性がありますが、概ねこれまでの支出(公共料金、食費、日用品費など)を踏まえて計算していくことになると思われます。こちらの考えによる場合は、支払う側にまとまった退職金、預貯金(相続財産であっても考慮されます)があることが前提のように思われます。
いずれにしても、支払いをする側からすると、収入がないから婚姻費用は支払わなくてもよい、ということになるものではなく、資産その他の事情一切を考慮した上での計算となりますので、退職金や預貯金も踏まえた金額での計算となります。